エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを 蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点克服
結論の第2は、地域間連系線の強化や、再エネ種別のバランスに合わせた蓄電池の導入により、電力の安定供給を確保しつつコストは横ばいに抑え、2040年までに炭素強度(排出係数)を8割以上引き下げられるということだ。
ただ、蓄電池は単位エネルギー(キロワット時)当たりのエネルギー貯蔵費用が高いため、電力を大量に長期貯蔵できず、数日から数カ月にわたる長期の変動再エネの発電の落ち込みに対応できないという問題がある。2030年代までは天然ガス火力がこうした長期の落ち込みを支える機能を担うが、最終的なカーボンニュートラル化において、この点を克服するのが水素だ。
結論の第3は、脱炭素の最終段階(2040年代)に、天然ガス火力を再エネ(とくに大きく伸びる洋上風力)で置き換えることである。反面、その(季節間)変動性の克服も課題になる。そこで、再エネ電力が余るときは、それを電源とする水の電気分解により「グリーン水素」を国内で製造し、タンクなどで貯蔵すれば、長期蓄エネ(LDES: Long-duration energy storage)として機能する。必要な際に燃料電池などで電力に戻すことができる。
再エネ大量導入で国産化可能な「グリーン水素」
水素は国内で製造する方法と、海外の安価な電力で製造して液化して輸入する方法がある。日本で水素政策が議論されるときは、もっぱら後者が前提にされているように見受けられる。後者のほうが安価だから、という理由だ。ところが本研究は、その反対の結論を引き出した。さまざまな仮定を置いて国産と海外輸入の経済性を比較したところ、ほとんどのケースで国産水素のほうが安価であることが示された。輸入水素の需要は小さく、国産水素を製造して長期エネルギー貯蔵を行うほうが経済的であることがわかった。
海に囲まれた日本が遠方から水素を輸入する場合、天然ガスと同様に液化して輸送し、そこから気化することが最も安価な方法である。この点は、陸上の天然ガスパイプラインを改修して利用できるアメリカやヨーロッパとは大きく異なる。
その液化、輸送、気化の際に多くのエネルギーが失われる。さらに、港や液化設備などの関連設備の整備には巨額の投資が必要になる。仮に再エネ電力が非常に安価な国(オーストラリアなど)で水素を製造したとしても、液化、輸送、気化などのプロセスを通じて日本で利用する段階では数倍の費用がかかる。それは輸送が容易とされるアンモニアなどに改質して輸送し、水素に戻す場合でも本質的には同じことである。日本政府が掲げる非常に野心的な20円/Nm3(ノルマル立方メートル)という供給コストで水素を輸入できたとしても、さまざまな再エネ・蓄エネの技術コストを置いて費用最小化計算を行った結果、ほとんどのケースで国産水素によるLDESが選択される(すなわち国産水素のほうが安価である)ことが示された。