アメリカのGDPや企業収益が拡大するのに反して、あるいは株価が上昇するのに反して、物価上昇を考慮に入れた実質賃金が低下し続けてきたという事実を、アメリカの主流派の経済学者は決して無視してはいけないと思います。アメリカの採用してきたインフレ目標政策がいかに間違っていたのか、彼らはしっかりと理解する必要があるのです。(関連記事:「なぜ日本は『米国の失敗』をまねるのか」)
また、2013年以降、インフレ目標政策を採用した日本の企業収益が拡大したのに対して、あるいは株価が上昇し続けたのに対して、日本国民の実質賃金が急速に悪化していったという事実も、私たちは決して忘れてはいけません。
「景気の拡大=国民生活の向上」「企業収益の拡大=国民生活の向上」あるいは「株価の上昇=国民生活の向上」という時代錯誤の常識はもはや通用しないわけです。
経済政策とは誰のために存在するのでしょうか?その答えはもちろん、普通の暮らしをしている国民のために存在しているのです。
この連載でも触れたことがあるように、ケインズの師匠でもあるケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャル教授は、学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす人々の様子を見せながら、「経済学者になるには冷徹な頭脳と暖かい心の両方が必要である」と教え諭したといわれています。
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