もう一つは、経済成長が思うように伸びない先進国を中心に、経済統計の算出方法を変えることによって、GDPそのものやGDP成長率を嵩上げしようとする動きが広まりつつあるということです。実際に、欧州は2014年9月にGDPの算出方法を改定し、その後のGDPのカサ上げに見事に成功しています。
さらには、アメリカでもGDPの算出手法を変更し、新指標の公表を始める用意をしているといいます。日本ではGDPの統計手法に関する議論はないものの、日銀が2015年7月から従来の消費者物価指数(CPI)と異なる新しい指標を公表し、明らかにインフレ率がカサ上げされるような操作がなされています。
経済統計を操作しても、政治への不満が高まるだけ
そもそも、いくらGDPやCPIの数値を見かけ上だけ引き上げたとしても、市井で暮らす人々の生活実感が変わるわけではありません。正直に言ってしまえば、合法的な手続きを経て、経済統計を意図的に粉飾しようとしているのです。
そのような方向性にあまり大きな意味を見出すことはできません。新しいパラダイムの中では、たとえGDPやGDP成長率を意図的に引き上げたとしても、人々の実質賃金が経済成長に大きく割り負けしてしまうという結果を招くだけであるのです。むしろ、経済成長に置き去りにされる人々が増えてしまい、現状の政治に対して不満が高まるという帰結をもたらしてしまうことになるわけです。
なお、私事ですが、新刊『石油とマネーの新・世界覇権図~アメリカの中東戦略で世界は激変する』(ダイヤモンド社)が発売されました。
私はかつて、拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月出版)において、「将来の原油価格が半値になると、世界経済はどのように変わるのか」という内容を、政治的に想定される出来事も含めて著わしました。
しかし新たに注意すべきは、シェール革命が世界に地殻変動をもたらした第1弾の出来事と捉えるとすれば、すでに第2弾の出来事が今年の7月に「アメリカとイランの和解」という形で起こっているということなのです。
アメリカとイランの和解は、世界経済の力関係だけでなく、国際政治の戦略をも大きく変えうるポテンシャルを秘めています。そして、新しい地殻変動は早ければ2016年にも現実に起ころうとしているわけです。
もし興味がございましたら、ぜひご覧ください。
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