経済学の存在理由は「人々の生活を豊かにすること」のはずであるのに、目下のところ、経済学は経済学者が飯を食うための象牙的な学問になってしまっています。権威のある経済学者が間違った経済政策を提唱し、国家がそれを採用してしまっているのです。
大多数の人々が盲目的に経済学の権威を信じ込み、経済のパラダイム(見方や捉え方)が大きく変化してきていることに気づいていないように思われます。これからの経済の現場では、かつての常識が通用しないことを肝に銘じておく必要があるでしょう。
こうしたパラダイムの変化を踏まえたうえで、世界の経済や政治を見渡していますと、私が現時点で懸念していることが二つあります。
高リスク投資を続けざるを得ない機関投資家
一つは、世界中の中央銀行が金融緩和に過度に依存することで、株式市場や不動産市場などでバブルの下地が醸成されつつあるということです。とりわけ、2015年3月にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を開始したことで、欧州市場の国債金利が著しく低下することとなりました。
その結果、史上空前のカネ余りと低金利がもたらされ、世界的に国債市場から株式市場への過度な資金流入が起こってしまっています。原油を代表とする商品市場の低迷が長期化する様相にあるので、商品市場から流出した資金までもが株式市場に流れ込んでいるのです。
おまけに、その後も先進国、新興国問わず、各国の中央銀行が金融緩和に走っているため、世界の機関投資家が高リスク投資を続けざるを得ない状況がつくりだされているわけです。
ところが、アメリカがひとたび利上げを始めれば、株価の長期的な調整が起こる可能性が高まってくるでしょう。そして、ただでさえアメリカ以外は芳しくない世界経済には、下押し圧力が働くことになるでしょう。新しいパラダイムで金融経済を考えると、株価収益率(PER)などの指標は役に立たないのです。
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