企業の設備投資が動き出した。日本銀行が7月1日に発表した、6月調査分の企業短期経済観測調査(短観)の2015年度設備投資計画は「ポジティブサプライズ」ともいうべき内容だった。
「この時期として近年まれに見る大幅な上方修正」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)との指摘もあり、企業の投資意欲の回復を裏付ける結果となった。
特に目立ったのが、大企業製造業の投資計画だ。3月調査では前年度比5.0%増だったのに対し、今回は同18.7%増と11年ぶりの高い伸び率を記録した。
一部に国内回帰の動きも
最近の業績好調が投資行動を後押しする。老朽化した設備の更新に取り組む企業が増えてきた。円安進行で一部には国内回帰の動きも出ており、これに伴って能力増強投資に踏み切るケースもあるようだ。
人手不足感の高まりを背景にした省力化投資も活発化している。6月調査の日銀短観で、雇用が「過剰」と答えた企業から「不足」と答えた企業の割合を差し引いた雇用人員判断DIは、大企業全産業ベースでマイナス9。3月調査から1ポイントのマイナス幅縮小にとどまり、「不足超」が続く。
財務省の法人企業統計によると、企業の設備投資額はリーマンショックが起きた2008年度以降、2012年度まで5期連続で減価償却費を下回っていた。「巡航速度」で経営している企業の場合、投資額を減価償却費の範囲内に抑えるのが一般的だ。
しかし、2013年度には投資額が減価償却費を超過し、足元もその状態が続いていると見られる。投資を極力抑えて内部留保などに回していた企業が、前向きな姿勢へと変わってきたことの表れといえそうだ。
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