「何をそんなに気にしているのだ。父は、そんな様子はちっともなく、こんなに病が重くなったことを聞いて驚いて、これ以上ないほど心を痛め、残念に思っているのに。そんなに思い悩んでいたのなら、どうして今まで黙っていたのだ。父とあなたのあいだに立って、ことをはっきりさせられたのに、今となってはもうどうしようもない」と、大将は昔の督の君を取り戻したいと悲しく思う。
たえがたく気分が悪くなり
「たしかに、ほんの少しでも具合のいい時に、相談して意見を聞けばよかった。けれどこんなふうに今日明日ではなかろうと、自分のことながら先のわからない命をのんきに考えていたのも浅はかだった。どうか今話したことは、あなたの胸ひとつにおさめて漏らしてくれるな。何かのついでがあれば気に掛けてもらいたいと思って話したのだ。一条の邸にいる宮(落葉の宮)を何かにつけて訪ねてあげてほしい。私がいなくなればおいたわしい身の上となって、父である朱雀院のお耳にも入るだろうから、よろしく取りはからってくれ」などと話す。言いたいことはもっとたくさんあるに違いないが、たえがたく気分が悪くなり、「もう帰ってください」と手ぶりで促す。加持祈禱の僧たちが近くに集まり、母北の方や父大臣たちもあらわれて、女房たちも騒ぎ出すので、大将は泣く泣く立ち去る。
次の話を読む:10月13日14時配信予定
*小見出しなどはWeb掲載のために加えたものです
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