日本の離島は、周囲からの脅威に無策である 国境にある重要な島を無人にしてはいけない

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同法案の内容は「有人国境離島地域」と「特定有人国境離島地域」を定め、前者を「自然的経済的社会的観点から一体をなすと認められる2以上の離島で構成される地域、および領海基線を有する離島であって、現に日本国民が居住する地域」と定義。このうち「継続的な居住が可能となる環境の整備を図ることが地域社会を維持する上で特に必要と認められるもの」を「特定有人国境離島地域」とした。後者については北海道、東京都、新潟県、石川県、島根県、山口県、長崎県、鹿児島県に所在する71の離島が指定される。

「これは離島を無人化させない法律。国民がしっかりと定住することで、領海や排他的経済水域を守り、ひいては国益を守ることを目的としている」と、法案の共同提出者のひとりで同党離島振興特別委員長を務める谷川弥一衆院議員は述べる。

谷川氏が地元とする長崎第3区には、壱岐や対馬など離島が数多く含まれる。このうち1973年に無人化した葛島では、1997年に中国人の集団密航事件が勃発したこともある。また韓国の馬山市(現・昌原市)は対馬を「韓国の領土だ」と主張して、2005年に「対馬の日」を制定している。

さらに対馬では2012年、海神神社の国指定の重要文化財である『銅造如来立像』と観音寺にあった長崎県指定の有形文化財である『銅造観世音菩薩坐像』などが韓国の窃盗団によって盗まれるという事件が勃発。「私は第2次安倍内閣の文科副大臣として外務省に働きかけ、韓国に返還を求めようとしたが、容易ではなかった」と、谷川氏は述懐する。国境をめぐって阻む壁は、とてつもなく厚く高いのだ。

国が土地の買い取りも推進へ

そこで国境警備を強固にするため、同法案では「有人国境離島に係る施策」として、国が行政施設を設置し土地の買い取りに務めるなど、国と地方自治体が協力して治安の維持に努めることを規定する。さらに「特定有人国境離島地域に係る施策」として、交通手段となる船や飛行機の運賃の低廉化や雇用機会の拡充、安定的な漁業経営の確保など盛り込み、定住しやすい環境整備を目指すとした。

谷川氏が構想するのは、たとえば漁船を沖に出して操業すると、それが国境警備の役割も果たすと見なして公的手当を出すという制度だ。そのヒントとなっているのは日露戦争の真っ最中にロシアのバルチック艦隊が日本近海を北上しているのを発見し、宮古島の駐在所に通報した沖縄の漁師・奥浜牛の事例。細かく警備できるのと同時に、定住者の生活の保証にもつながる。

この「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法案」は、今国会に提出される予定。次に取り組むべきは無人国境離島対策だという。

そして資源の確保も、今後の重要な課題になるだろう。日本の領域であるが中国も領有を主張する「暫定措置水域」では、2015年漁期で操業する中国漁船の数が1万7500隻に対し、日本漁船は800隻。同水域での漁獲量の上限努力目標値は中国が166万2372トンに対して日本は10万9250トンで、いずれも不平等さが目立つ。さらに中国漁船は「虎網」を用いて魚を根こそぎに獲っていくことを、地元の漁民は甘受させられている。

水産庁は「もともとこの海域では中国の操業が多かったため、前例に倣った結果」と弁明するが、「独立した国家間の関係は、国際法に即して公平に行われるべき」というのが谷川氏の主張。日本の海を守るために、強力な政治的主導は実現されるだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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