マレー半島、ジャングル縦走「夜行急行列車」の旅 首都クアラルンプールは都市交通が充実

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しかし、現在のこの路線は、大部分の区間が電化され近代化が果たされたものの、格安航空会社や高速バスの発達で、鉄道の役割は低下、国際列車を楽しむようなダイヤではなくなった。おもに力を入れているのは首都クアラルンプールからイポーへのインターシティとなった。

車両は、かつて日本製を含むディーゼル電気機関車が客車を牽引、食堂車を連結するなど汽車旅旅情あふれるもので、古くは冷房のない普通車では窓全開で旅を楽しむことができた。しかし、現在の車両は、一部非電化区間で機関車の引く客車列車が残っているものの、中国製や韓国製の電車が主役で、食堂車は売店となり、窓の開かない車両ばかり、近代化されたものの、旅情は希薄に感じる。冷房も日本人にはかなり強めである。マレー半島の旅のスタイルはすっかり変わってしまった。

東のルートには長編成の客車夜行が健在

いっぽう、マレー半島中東部を縦貫する路線では、昔ながらのマレー鉄道の旅情が味わえる。シンガポールの対岸となるマレーシア最南端のジョホールバールから、半島を北上し、タイとの国境近くのトゥンパに至る742kmである。昼間の列車に加えて長距離夜行列車が1日1往復あり、上りも下りもほぼ同時間帯、夜に出発し、終着には昼過ぎに到着、所要時間は16時間程となる。

この夜行列車は、カナダ製ディーゼル電気機関車が普通車5両、1等車1両、寝台車6両、食堂車1両、電源荷物車1両の14両編成を引くという堂々としたものだ。日本では客車夜行は絶滅してしまったが、かつての寝台特急ブルートレイン、あるいは夜行急行客車を思い起こさせる列車で、日本の鉄道ファンにもおすすめである。

しかし、筆者はこの列車に始発から終着まで乗り通したわけではない。ジョホールバールからトゥンパまでの742kmを途中のクアラリピスという小さな町で1泊し、2日をかけ、この夜行列車を含め3つの列車でたどった。理由は、夜行列車だけで通り過ぎてしまうと車窓が楽しめないからで、昼間に走る列車ばかりを選んだのである。このルートは熱帯ジャングルを行く車窓が魅力である。

前夜はジョホールバールに宿泊し、まずは朝のグマス行きのディーゼル電気機関車牽引の客車列車で北上した。この区間はクアラルンプールへ向かうのと同じルートで、現在は非電化区間であるが、電化工事中である。終着のグマスではクアラルンプール方面のバターワース行き電車と、クアラリピス行きディーゼルカーが接続する。バターワース行きは中国製電車、クアラリピス行きディーゼルカーも中国製で、エンジン発電モーター駆動の最新式である。

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