安易な近代批判を戒め日中「公共圏」を提唱
著者は気鋭の中国経済研究者だが、本書ではあえて専門分野の外にまで踏み出した。現代中国に関する多くの書籍が見落としている視点を掘り下げ、類書のない著作に仕上がっている。
中国の不動産問題について報道されたり議論されたりする際には、「バブルが崩壊するか」だけが焦点となりがちだ。薄熙来事件のような政治スキャンダルがあれば、もっぱら「共産党の権力闘争の行方は」といった関心で扱われる。また、日本の安全保障にとっての中国の「脅威」が議論される場合には、共産党によるナショナリズムの発揚などが焦点となる。
本書では、こうした問題に通底するのは何かを探り出すための問いが繰り返し提起される。いずれの課題も経済格差の拡大やモラルの低下と密接に関係しており、こうした社会の歪みを正すものは「内部」の民間思潮にあるというのが著者の問題意識だ。その構造は日本にも見られるものであり、著者は、日中の知識人による国を超えた「公共圏」づくりに現状打開の可能性を見いだす。
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