気仙沼ニッティングはエルメス、虎屋に学ぶ 100年続く企業にするためにやっていること

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気仙沼ニッティングのニット

ところで、この事業をここまで育てた立役者は著者だけではない。傑出したニットデザイナーである三國万里子さん、プロジェクトのバックエンドを支えている斉藤和枝さんのお二人はその中心人物なのだが、それ以外にも斉藤家の「じっち」や「ばっぱ」など魅力的な人たちが登場してくる。著者によれば、気仙沼の人はオープンで、国際的で、どこかハイカラだという。読者は気仙沼という風土の面白さや、地方都市の醍醐味も味わうことができるであろう。

気仙沼ニッティングの旗艦商品はMM01というオーダーメードのカーディガンだ。順番を待つ必要があるらしい。価格は15万1200円だ。これが高いか安いかは買う人の使い方次第であろう。

手本はアイルランドの漁師が着ていたセーター

アイルランド・アラン諸島へ訪れた時の、御手洗 瑞子さん(右端)

かつて白洲次郎は「ツイードなんて、買ってすぐ着るものじゃないよ。3年くらい軒下に干したり雨ざらしにして、くたびれた頃着るんだよ」と語った。ハリスツイードはイギリスのハリス島の漁師たちの定番ジャケットだった。イギリスのカントリージェントルマンはそれにならい、わざわざボロボロになったツイードジャケットを着て粋がっていたのだ。

気仙沼ニッティングはMM01を創るにあたり、アイルランドのアラン諸島に取材に行っている。

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手編みのアランセーターこそがお手本なのだ。そのセーターこそアラン諸島の漁師が船の上で着る作業着だったのだ。長年にわたって着ることができるジャケットやセーター。いや、時間をかけて着古していくことに価値のある宝物が15万円だとしたら安い買い物なのかもしれない。

それにしても本書を読みながら無性に気仙沼を訪れてみたくなった。

かの地では驚いたときには「ばばば」というのだそうだ。久しぶりに道で出会うと「ば!」、もっと驚くと「ばばぁ!」最上級が「ばばば!」らしいのだ。MM01を注文して順番を待つことにしようと思う。もし、自分の順番がきたら「ばばばば」と驚きながら、採寸のために気仙沼に行ってみようと思う。

※写真提供:株式会社気仙沼ニッティング

会社設立までのプロジェクトの進行については「ほぼ日」のコンテンツが詳しい。本書と併読することをおすすめする。

 

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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