気仙沼ニッティングはエルメス、虎屋に学ぶ 100年続く企業にするためにやっていること
著者は気仙沼ニッティングの創業者。東京大学経済学部を卒業し、戦略コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職した女性だ。ブータン政府では初代首相フェローとして産業育成に従事していた。どれほど目から鼻に抜けるような才女であろうと構えて本書を読み進めたのだが、そこにはたおやかで優しい眼差しをもつ、小柄で元気なお嬢さんの姿しか見えてこない。本書冒頭のプロローグを読むだけで、いかに肩に力が入っていないかよくわかる。
戦後日本人は焼け跡から高度成長期、バブル期から停滞期を経て、ついにある意味で日本人の理想形として、いま30歳以下の若者たちを作り上げてきたのではないか。自然体で強欲ではなく、知識を備えて現場に立ち、どこか謙虚でチャーミング。その典型としての人物像を本書で見ることができるかもしれない。彼らこそわれわれ中高年が苦労して作り上げた作品だと思えば、誇らしい気もしてくる。
気仙沼ニッティングが目指すもの
とはいえ、彼女の決意は固い信念をともなうものだ。この会社が目指すものとは
というものだ。編み手を筆頭とした社員はもとより、株主を含めたステークホルダーの誇り。美しくて高品質、世に残る商品がもたらす満足感。収益性の確保による事業の永続性。そしてグローバルブランディングへの挑戦である。立派な経営計画である。本書の読み方はいろいろあろう。東日本大震災からの復興支援という視点もある。しかし、ビジネスマンにとっては良質なビジネス書として心を落ち着けて読むことができる好著だ。
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