金融政策が招く、バブルと危機の繰り返し パンチボウルのたとえ話は色あせない

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こうした考え方を大きく変えたのは、アラン・グリーンスパン元FRB議長だろう。1996年12月には株価の上昇に「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」という有名な言葉で警鐘を鳴らしたが、その後宗旨替えをして、米国経済の生産性の伸びを理由に株価の上昇を正当化するようになる。

危機を脱するための金融緩和が次のバブルをつくる

2000年代初めに崩壊したITバブル(dot-com bubble)では、ハイテク銘柄が多いNASDAQの総合指数は、1999年1月に2000を突破して2000年3月には5000を超えたが、2002年1月には1100台にまで下落している。しかしITバブルの崩壊で落ち込んだ米国経済は、グリーンスパン議長のFRBによる思い切った金融緩和で予想外に早く立ち直る。

2002年のジャクソンホールでの講演でグリーンスパン氏は、バブルは崩壊するまで確実には分からないので膨張を予防することは難しく、金融政策は崩壊後の事後処理に注力すべきという考えを述べている。しかし、ITバブル崩壊後の危機を脱するための金融緩和政策が、もっと大きな住宅バブルを引き起こし、崩壊によって引き起こされた2008年のリーマンショックで世界経済全体が大きな打撃を受けた。

パンチボウルのたとえ話は未だに色あせていない。危機を脱するために危険を冒すのはやむを得ないが、ほどほどのところで妥協するのが安全だ。金融政策を使って経済の最適なコントロールを行おうとするのはリスクが高い。将来に対する過剰な期待との相互作用による資産価格の上昇を抑制することは、経済や金融市場の安定のために非常に重要であると考える。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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