金融政策が招く、バブルと危機の繰り返し パンチボウルのたとえ話は色あせない
株や土地、住宅などの資産のファンダメンタルな価格は、その資産を保有することで将来得られる利益の合計の現在価値だと説明されている。
税などを考慮せず、最初に受け取る配当(または家賃・地代)D1が毎年一定率gで増加し、将来の価値を現在価値に直す割引率rが一定、株のような危険性のある資産に投資することに対するリスクプレミアムρも一定という単純な場合には、株価や土地・建物などの資産のファンダメンタル価格は
P=D1/(r+ρ-g)
となることは初級の経済や経営学の教科書に説明されている。
現実には税の影響を考慮する必要があり、将来の金利や配当の増加率も変動するので、価格に与える影響は複雑だ。しかし、主な要因が資産価格に与える影響の方向性はこれで理解できる。例えば、将来の金利が低下すれば理論価格は上昇するので、日本銀行の金融政策が変更されて政策金利が引き下げられるという予想で、株式相場が上昇すると言った具合だ。
行きすぎた楽観で起こる価格上昇
バブルと呼ばれている資産価格の上昇は、「ファンダメンタル価格から離れて、価格が上昇していく部分」と「株価や土地のファンダメンタル価格が異常に上昇する部分」とに分けて考えるべきで、経済学的で言うバブルは前者だけだという考え方もある(村松岐夫・奥野正寛(編)(2002)「平成バブルの研究(上)」(東洋経済新報社)の序章)。
しかし、このように価格上昇を厳密に区別することは難しいし、あまり有益とも思えない。ミシュキンの教科書では、「ファンダメンタルな経済的価値とは、資産から得られる将来所得の現実的な予想(realistic expectations)に基づいた価格」と定義している。人々が将来に対して異常に楽観的になると、ファンダメンタル価格自体が異常に高いものになってしまうからだ。
資産の理論式を見れば分かるように、人々が配当の増加率gとして高い値を予想すれば資産価格は上昇する。資産価格の上昇は消費や投資行動を活発にして、景気はよくなり企業収益も改善するので、人々は配当の増加率gが高いことに対する確信を強めるだろう。それはさらに資産価格の上昇を引き起こし、再び現実の経済の好調となって表れる。資産市場と現実経済の好循環が、資産価格を「異常」な水準に押し上げる。
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