金融政策が招く、バブルと危機の繰り返し パンチボウルのたとえ話は色あせない

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株価や土地、不動産などの資産価格が上昇している背景には、現実の経済が活況で企業収益の伸びが高かったり、ビルなどの賃貸料が急速に上昇していたりという事実による裏付けがあることが多い。人々がまったく何の根拠もなく、突然、将来に対してあまりに楽観的な予想をするようになるわけではない。現実経済の好調という事実が徐々に人々に非常に楽観的な将来に対するストーリーを信じさせていくのだ。

例えば1980年代後半のバブルでも東京の地価高騰には、東京の国際化でオフィス需要が急拡大するというストーリーがあった。現実に東京のオフィス賃貸料は高騰し、それに刺激されてオフィスビルの建築が活発化し、東京中心部の土地が足りないので東京湾に巨大な人工島を作ろう、という構想まで打ち出された。将来もこのような好調が続くというストーリーを多くの人が信じて、売上高の伸びや企業収益の伸び、賃料の上昇が続くという人々の確信が強まっていった。

マーチンvs.グリーンスパン

ガルブレイスの「バブルの物語」は、様々なバブルの歴史を紹介しているが、繰り返される投機のエピソードの裏には必ず「世の中に何か新しいものが現れた」という話があると指摘している。このような高い上昇率が続くはずがないという考えに、今までとは違うことが起こったのだから、過去の経験では判断できないという反論が返ってくるのだ。

後から歴史を振り返れば、こうした将来に対する見方は楽観的過ぎたもので、ありえないことを予想していたことが明らかでも、その時点では好調な経済という現実の説得力が強いのだ。

株式市場では「売りが売りを呼ぶ」と言われるように、株価の下落時にはファンダメンタルズから大きく価格が下方に乖離することも起こる。このため資産価格の上昇が経済を好調にするメカニズムが逆回転して、景気は大きく落ち込んでしまう。

かつては、FRB(米連邦準備制度理事会)議長だったウィリアム・マーチンが、「FRBの役割は宴たけなわとなる、その時にパンチボウル(パーティーのお酒)を片付けることだ」という比喩で述べたように、バブル崩壊による経済の大きな落ち込みを回避する最善の策は、そもそもバブルを大きく膨張させないようにすることだとされていた(Martin, William M. (1955) “Address before the New York Group of the Investment Bankers Association of America”)。

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