日本株「突然の大暴落」を引き起こした真犯人 株高を支えてきたメカニズムが崩壊した

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2024年初来の日本の株価の顕著な上昇について、さまざまな説明がなされた。円安で日本株が割安になったため、外国人投資家の対日投資が増えたとか、中国経済の停滞のために、これまで中国に向かっていた投資が対日投資に回った、などと言われた。あるいは、日本企業が株主優先の姿勢を強めたことも原因だと言われた。

これらのうち、外国人投資家の対日投資増は、株価が上昇したからだが、その原因は、すでに述べたように円安だ。株主優先姿勢への転換もあったのかもしれないが、しかし、それは、株価上昇の基本的な理由とは考えられない。もしそうしたことが株価上昇の原因なら、株価暴落は起きないはずだ。

FRBの利下げ幅が大きくなる?

今回の大暴落の原因についても、さまざまなことが言われる。日銀が7月末に決定した利上げや、アメリカの景気悪化などだ。しかし、最も重要な原因が、円安バブルの崩壊であることは明らかだ。アメリカの景気悪化は、「それによって9月に予定されているFRBの利下げ幅が、これまで考えられていたよりは大きくなる」という形で間接的に影響している。

前項の最後で述べたことがなぜ重要かを説明しよう。

2022年以降の円安は、「円キャリー取引」によって支えられてきた。これは、極めて投機的な取引だ。このため、円ドルレートも、したがって日本企業の利益も、したがって日本の株価も、変動率が高くなっていた。

この取引に大きな影響を与えるのは、FRBの利下げ幅なのだが、それについての見通しが、最近大きく変わったに違いない。

円キャリー取引に変調が見られることは、7月の初めごろから報道されていた。その変化が決定的になったのだろう。

最近の為替レートは急速に円高方向に動いている。これが続けば、日本企業の利益は減少する。したがって、これまでの株価上昇をもたらしてきたメカニズムが崩壊する。この変化は極めて重大だ。日銀が追加利上げを延期したところで収まるようなものではない。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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