1997年のアジア通貨危機でもタイバーツや韓国のウォンが暴落し、影響される形で翌年、ロシアのルーブルが暴落し、通貨危機に発展している。最終的に、アメリカの最先端のヘッジファンドだった「LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)」の経営破綻につながり、中央銀行である「FRB(連邦準備制度理事会)」が、ヘッジファンドを救済する事態に陥っている。
②金融危機は増幅する
そして、もう1つ忘れてならないのは、市場の混乱は危機を増幅させるということだ。今回の日経平均株価の暴落も、本来であれば日本銀行の植田総裁の金利引き上げ発言だけだったはずだが、その後、発表されたアメリカの雇用統計の悪化が、景気悪化懸念につながり、アメリカの金利は大きく下落する、という連想となり、金利引き上げの日本との金利差は大きく縮小し、円が想定外に買われてしまった。円高の進行が日本経済の輸出産業の業績悪化を招くとの予想から、日経平均株価は史上最悪の暴落を招いてしまった。
おそらく、日銀の利上げと雇用統計発表の間隔がもっとあいていれば、こんな形にはならなかったはずだし、仮に株価が下落しても、ここまで大きなものにはならなかったかもしれない。そういう意味でも、市場暴落などの危機は増幅される、と考えていいだろう。
8月5日の大暴落以降、翌日には史上最大の上げ幅になるなど、なんとなく今回の危機は終わったという楽観ムードも漂っている。しかし、さらなる株価下落が連鎖して、増幅されて襲ってくる可能性はまだなくなっていない。
金融相場の暴落は、経済全体に影響する?
一方、株式市場の暴落は金融市場だけではなく、経済全体にも大きな影響をもたらすことを忘れてはならない。1929年のアメリカ大恐慌では、第2次世界大戦が終わるまでアメリカの景気を回復できなかった。株式市場は、資本主義経済にとってそれだけ大きな意味を持っていると考えるべきだ。具体的には次のような影響が考えられる。
①個人投資家の資産が減少し、個人消費に影響が出る
アメリカの個人投資家ほどではないが、日本でも株価暴落の影響を受ける。自分自身の資産が減少することで、消費行動に陰りが出てくるかもしれない。ただ、日本の場合は、今回の大暴落によって超円安に歯止めがかかった面があり、輸入物価が落ち着くためにインフレが一服し、消費行動はやや回復するかもしれない。とはいえ、高額商品の売れ行きには大きな影響が出る恐れがある。
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