悲観的な脳でも、楽観的な脳に変えられる なぜマイケル・J・フォックスは復帰できたか

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やはり、セロトニン運搬遺伝子は「楽観性を生む遺伝子」と言えるのではないか。

この研究結果は大いに人々の話題になり、マスコミにも取り上げられました。何しろ、性格を決める遺伝子があったかもしれないというのですから。

この研究結果に、ある楽観主義の人物が興味を持って、私に連絡してきてくれました。

悲観的な遺伝子の型が驚きの変化を見せる?

それは、俳優のマイケル・J・フォックス。彼はまさに不屈の楽天主義者です。ご存じの通り、マイケルは1980年代に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで人気絶頂を極めていました。ところが、わずか28歳でパーキンソン病を発症し、人生のどん底へ突き落されたのです。

しかし、彼は決してあきらめませんでした。粘り強く病気に相対し、苦境を逆手にとってパーキンソン病を抱える役柄で俳優復帰すると、今では自身の名を冠したTVシリーズに主演するほどの活躍を見せています。

そんな彼が、自身の『救いがたき楽天家』というドキュメンタリーの制作にあたり、私にコンタクトしてきたというわけです。そして、マイケルの調査は、私の研究に思いもよらぬ進展をもたらしたのです。

さて、私はマイケルに会い、彼の遺伝子を検査しました。そして、楽観的・悲観的、どちらの写真に注意をひきつけられるかをコンピュータ上で調べる「注意プローブテスト」で、彼の認知バイアスも計測しました。

そこでの検査結果は意外なものでした。マイケルの遺伝子型は、悲観的なタイプに分類されるものだったのです。

この矛盾をどう解釈したらいいのか。

マイケルの遺伝子の型がきっかけになって、研究の見直しが進みました。すると悲観的と思われていた遺伝子の型は、実は外界の影響をうけやすい型にすぎないことがわかったのです。

彼ら彼女らは、ネガティブな経験をすると確かに悲観的になるのですが、ポジティブな経験をすれば、より高い幸福を感じられます。逆境に打ちのめされやすい一方で、よいことからは最大の利益を引き出せるタイプだったのです。

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