私立大学635法人財務ランキング【本当に強い大学2011年版】--減益が半数、赤字法人4割に、運用難の苦しみさらに深まる
学納金の伸び率1位は千葉県の植草学園
帰属収支差額を改善させるには、収入を増やすか、費用を減らすしかない。大学の収入源は、(1)学生生徒等納付金(学納金)、(2)国や自治体からの補助金、(3)寄付金、(4)資産運用収入、の四つに大別できる。厳しい国家財政を考えれば、(2)が右肩上がりに増えることは望みにくい。(3)は宗教法人などリッチなスポンサーがバックについている大学以外は多くを期待できず、(4)は金融市場の混乱ぶりを考えれば、期待薄だ。全国の学校法人平均では(1)が7割弱を占め、学納金収入の多寡が学校経営を左右すると言っても過言ではない。
学納金10億円以上の学校法人の中で、学納金の伸びが最も大きかったのが千葉県の植草学園。08年に開校した植草学園大学が3年目を迎え、授業料収入が増えた。逆に減少率が最も高かったのは、船田教育会。10年4月に傘下の作新学院高校・中等部・小学部・幼稚園を別法人に移したため、学納金が大きく減少した。
主要大学で学納金収入減が深刻なのが東海大学だ。10年前のピーク時から約120億円減少し、大学病院の事業収入を下回ってしまった。「財務上の最大の課題は定員を充足できていないこと」(木本雄一常務理事)。11年5月現在、収容定員2万8703人に対し、学生は2万8394人。中でも、開発工学部(静岡県沼津市)や芸術工学部(北海道旭川市)は定員充足率が30%程度にとどまっており、学生募集を停止もしくは停止予定だ。熊本市内にある総合経営学部と産業工学部は、改組を含めて検討中。定員割れは経営悪化の前兆で、注意を要する。
少子高齢化で学生数を増やせないなら、学費を上げるしかないが、授業料については、「値上げの議論はない」(明治大学)、「東京の大学は強気だが、関関同立で比較すると、据え置かざるを得ない」(関西大学)と、模様眺めの大学が目立つ。
これに対し、慶応義塾大学は、学費を自動改定する「スライド制」という仕組みを1976年から導入しており、10年度決算では4億円ほど増収に寄与した。同大のスライド制は、消費者物価指数や人事院勧告に応じて学費を上方改定する仕組み。しかし、物価のデフレ基調が続き、公務員人件費もマイナス改定がなされる時代にはそぐわなくなっている。「現行のスライド制を含めて、学費改定の基準について再検討を加えているところ」(清水雅彦常任理事)。デフレ時代の学費水準について、模索が続きそうだ。