「日本発の株価大暴落」はまだ終わっていない 暴落は収束したかに見えて何度もやって来る

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しかも、この2つの暴落とも、明確な暴落の理由はなかった。有力者や政府関係者がバブルだと言ったという類の、細いピンでチクッと刺した程度でバブルは破裂したのである。

明確な理由がないのは、今回も同じである。アメリカの景気見通しが悪化したなどといわれているが、大した悪化ではないし、予想されていたことだった。また、日本の暴落は日銀の利上げと日銀総裁の記者会見がきっかけと思われているが、0.15%の利上げであり、記者会見もニュアンスが変化しただけで大騒ぎするものではなかった。

しかし「大した理由でないのに暴落が起きた」ということこそが、事の深刻さを表しているのである。暴落の原因はバブルだったという事実そのものにあり、それ以外になかったのである。だからこそ、暴落が止まる理由はないのである。

バブルが完全に崩壊するまで、反転があればあった分だけ再度下落するのである。だから、私は、暴落は乱高下を繰り返しながら継続すると考える。

日本株や金融市場全体に深刻な影響の懸念

第2に、さらに深刻なのは、日本株であり、日本の金融市場全体である。なぜなら、為替という大きな要素があり、為替こそが明らかな、とてつもないバブルであったからである。

円キャリートレードが世界を巻き込んだので、資金の出所として国外もかんでいる。さらに、個人かつ投資初心者を巻き込んでいる。その結果、多種多様、さまざまな買い手主体が錯綜している。有象無象の群集によるバブルである。となると、収拾がつかないのは必至で、バブル崩壊過程はこんがらがりながら長く続くだろう。

そして、最も重要で基本的なことは、中央銀行が作ったバブルであるということである。流動性が中央銀行から直接に供給された。しかも、政府国債を直接買い支えた。その結果、財政もばらまかれた。民間金融機関から国債を吸い上げた。

つまり、国内金融市場の資金を中央銀行と政府が一体となって、バブルにつぎ込み、円安と株高をつくったのである。ここで重要なのは、その罪ではなく、その結果、銀行を巻き込んだバブルと同じことになっているということである。

しかも、今回の銀行は、市中の商業銀行よりも、一国の経済の根幹をなす中央銀行がバブルに巻き込まれているのである。そして、金融政策の変更が混乱を招いた最大の原因だと誤解されている。バブル崩壊のコントロール、軟着陸を実現するための最重要プレーヤーの行動が今後縛られることになり、また信用もされていないのである。

この結果、日本金融市場のバブル崩壊、株式の暴落、通貨の混乱、国債市場の混乱、これらすべてが起こりかねない条件がそろっているといえる。そして、そのバブル崩壊の危機が実体経済、社会全体に波及する要素がそろっているのである。

したがって、私は世界で最も日本市場が危ないと思う。まずは、株式市場。次に為替が急激に円高になったあとに、中央銀行と政府の政策の混乱で円が急落し、国債も暴落する。それが最悪のシナリオであり、このリスクシナリオが実現する可能性はある。

1929年のようにはならないが、普通のバブル崩壊、アジア金融危機で東アジア諸国が経験した危機のようなことになりうる。

※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は8月17日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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