ひな壇のような前面展望席、今や他の車両でも見られおなじみとなったものの、海を向いた座席というのは、おそらくリゾート21が「先駆車」のひとつなのではないだろうか。こうした工夫に満ちた車両でありながら、特別料金を取らない普通列車としての運転という破格のサービスは、高く評価したい。
海を望む観光列車といえば、デビューしたばかりの北陸・能登を走る「のと里山里海号」(のと鉄道)も紹介しておきたい。北陸新幹線で近くなった能登。和倉温泉や輪島を周遊するときは、のと鉄道にも乗ってみよう。
観光列車の王道といえば、絶景や車内、駅でのおもてなしと続くけれど、それが凝縮され、観光列車のリレーで周遊コースとなっているのがJR九州の肥薩線だ。鹿児島中央駅から「はやとの風」「しんぺい」(逆方向の列車は「いさぶろう」)「九州横断特急」(SL運転日には「SL人吉」)という観光列車のゴールデンルートを形成していて、誰もが気楽に鉄道旅行を楽しめる工夫は見事というほかない。
ユニークな観光列車もご紹介
これまで、王道的な観光列車を紹介してきたが、終わり近くになって意表をついた列車を取り上げてみたい。そのひとつは、JR四国の予土線など(窪川~宇和島)を走る「鉄道ホビートレイン」である。0系新幹線もどきの奇想天外な改造車両はデビュー時に大いに話題となった。風貌には賛否両論あるが、乗ってみると、工夫された車内には驚くし、何といっても清流四万十川の車窓は見飽きることがない。「海洋堂ホビートレイン」「しまんトロッコ」と合わせて「予土線3兄弟」として四国の人気者だ。
最後に、車窓が楽しめないことを逆手にとった観光列車を紹介しておこう。それは北越急行ほくほく線の「ゆめぞら号」(越後湯沢~直江津)である。長大トンネルが多く、闇の中を走る地下鉄のような路線。景色が楽しめないなら、車内を暗くして映像を天井に映し出して楽しもうというアイデア。かくしてシアタートレインの誕生となったのである。普通列車なので、特別料金もいらず、BGM付きで天井に映し出される映像を見つつ、1時間あまりのユニークな旅を体験してみてはいかがだろうか。
このように、日本全国さまざまな創意工夫に満ちた列車が走っている。クルマやバスでは体験できない鉄道旅行ならではの旅は、きっと思い出に残ることだろう。飛行機やクルマ利用がメインであっても、行程のどこかで観光列車乗車を組みこんでみると、鉄道の良さがわかり変化に富んだ旅ができるのではないだろうか。
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