詐欺の被害額としては史上空前の規模です。「なぜ何十億も騙されてしまった?」と思い、「日本の大企業がなんで⁉」というシンプルな疑問がドラマ化の原点となり、新庄耕の同名タイトルの小説を読んで、ある種の“面白み”を確信したというわけです。新庄耕の小説を原作にドラマ化を進めていくなかで、関連資料やルポルタージュも読み漁ったとか。
大根監督は独自に取材も重ねます。1話で登場する東京・恵比寿の土地をめぐる詐欺事件は、不動産業者から直接話を聞いていくなかで着想を得たそうです。
なかでも、取材をするなかで重点を置いたのは騙される側の不動産デベロッパーでした。大根監督曰く、「(地面師詐欺の)犯罪手口は何かを読んだりすればわかること。でも、不動産の仕事に就いている人たちのマインドというか気持ちはというか、その辺りははかりかねるところがある」というのが理由です。
また騙されてしまう心理や状況を追求していくうちに、気づいたことがあったそうです。
「映像業界でも『なんでこんなドラマができちゃったのか』っていうことがなくはない。それはたぶんきっと主役のスケジュールを押さえてしまっているとか、上からGOサインが出て、準備不足のまま現場はヤバいと気づいても走らざるを得ないみたいな。だから、大きな会社に勤めた経験もなければ、サラリーマンという職業に就いたことがない僕でも想像しやすくもありました」
すり抜けて間違いが起こる皮肉さは、まさにドラマの中で表現されています。エンターテインメント作品としてデフォルメはされているものの、社内派閥の存在や通りにくい稟議書が社内で通ってしまうある種の生々しさが描かれています。
ジャンルは「ドッキリ」?
ドラマ「地面師たち」で感じる皮肉さは他にもあります。まず、単純な面白さとして、綾野剛や豊川悦司らが演じる地面師集団の騙す側と、山本耕史が登場する騙される側の不動産デベロッパー、そしてリリー・フランキーが警察役で地面師を追う側という3つの視点が混合し、さらに大根監督が演じる役者を想定して脚本を書き上げた、いわゆる当て書きならではの魅力があります。
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