「脱炭素を通じて社会変革」。先進企業に学ぶ戦略 迫り来る「5つの変化」を、ビジネスの好機に

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こうした課題に関しての、電炉による鉄鋼製品の生産量が日本最大である東京製鉄の取り組みを取り上げる。

東京製鉄は、電力会社との連携を通じて太陽光発電などの再エネの発電量を予測し、割安な昼間の余剰電力を購入することで電力コストの削減を行いつつ、再エネ利用拡大を図っている。

これにより、環境に優しい電炉鋼材の生産拡大を通じた脱炭素・循環型社会の実現に寄与している。さらに、ビッグデータとAI技術を利用して、鉄スクラップの自動解析を行い、仕分け作業の効率化にも取り組んでいる。

このような個別企業の取り組みをさらに拡大していくには、再エネ電力がより利用しやすい電力システムのルール構築や、投入する鉄スクラップの品質向上のためのリサイクルを前提とした商品・製品の開発といった他社との協力が不可欠である。

すなわち、既存の製鉄プロセスやバリューチェーンを変えていくことで、2040年頃にはサーキュラーエコノミー(循環経済)が構築され、エネルギー投入量と資源投入量が少ない製鉄プロセスが拡大していくことが展望できる。

この事例は、20の好機のうちの「高付加価値サービスへ転換する」「電化が品質・効率を向上させる」という好機に加え、「再エネ・水素で素材をつくる」「都市が資材の保管庫になる」という取り組みに該当する。

ITを駆使して再エネ電力をフル活用

次に、電力部門におけるストーリーを紹介する。

近年、再エネを使いたい企業が発電事業者と長期契約を結ぶPPA(電力販売契約)が増えているが、発電した電力を自家消費以外には活用できないことが制約となっている。

このような中、アイ・グリッド・ソリューションズでは、ビッグデータとAIを用いた需給予測に基づいて、屋上太陽光発電の余剰電力を他の電力利用者に融通する、余剰電力循環モデルを構築している。これにより、多くの建物において、屋根面積いっぱいまで太陽光発電を載せ、その電力をフル活用することができる。

アイ・グリッド・ソリューションズの余剰電力循環モデル(提供:同社)

この仕組みを今後さらに拡大していくためには、小規模分散電源からの電力を既存の送配電線を用いて近隣建物で円滑に利用できるようなルールの整備が必要となる。

このような取り組みが進むと、2035年頃には、小規模分散型電源を束ねて1つの大きな発電所に見立てるアグリゲーションビジネスの大きな発展が展望できる。

さらにその先の2040年頃には、地域の電力需要の多くを地域の再エネで賄うことができるようになり、エネルギーの地産地消ビジネスへの進化が期待できる。

この事例は、20の好機のうちの「エネルギーもデジタルでつながる」「太陽光発電が一気に身近になる」「日本中のまちがずっと豊かに」に該当する。

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