イスラエルvs.イラン「中東全面戦争」の現実味 「暗黙のルール」維持も徐々に高まる緊張
これに対して、イランやヒズボラとイスラエルの対立は、概ね暗黙のルールの範囲内にとどまっている。ハマスの呼び掛けに呼応してヒズボラは昨年10月8日にイスラエルへの攻撃を始めたが、同国北部国境地帯や軍事施設を標的とし、イスラエルが「レッドライン」とする北部の都市ハイファや商業都市テルアビブは攻撃対象としていない。
緊張が一気に高まるきっかけになったのは、イスラエルが占領するゴラン高原の町マジュダルシャムスにロケット弾が着弾し、12人が死亡した事件。ヒズボラは関与を否定したが、イスラエルはレバノンの首都ベイルートのヒズボラ拠点を空爆してフアド・シュクル司令官を殺害した。
その数時間後にはイランの首都テヘランを訪問中だったハニヤ氏が暗殺され、ハマスを支援するイランの最高指導者アリ・ハメネイ師は報復を宣言した。
メンツを潰されたイラン
イスラエルは2008年にも、ヒズボラの対外作戦司令官イマド・ムグニエ氏をシリアで暗殺している。イランでも2020年に著名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が暗殺されている。
ただ、今回はシュクル氏がベイルートで暗殺されたほか、ハニヤ氏はイランの精鋭部隊、革命防衛隊が管理する政府施設の滞在中に殺害されており、双方ともお膝元での警備や情報管理の脆弱性を露呈し、メンツを潰された格好だ。
これまでのところ、両者のイスラエルとの応酬は、全面戦争を招かないよう慎重に計算されている。イランは4月に在シリア・イラン大使館が空爆され、革命防衛隊幹部らが殺害された報復としてのイスラエル攻撃でも、軍事基地を標的として弾道ミサイルやドローンなど300発・基を投入したものの、市民の犠牲を出さないようにアピール効果を狙ったものだった。
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