異様なほどギリシャに肩入れする、IMFの真意 誰も語らない、ギリシャ危機の「核心」
だが、もうひとつ、大問題がある。それは、金融機関としての健全性を目指して制定されたIMFの運用規則が、かえってこうした放漫財政常習国への追い貸しを正当化する仕組みとなっていることだ。
非現実的な成長率予測で追い貸しをするIMF
次のグラフをご覧いただきたい。日米欧、主要先進国13カ国で国家債務の対GDP比率を減少させるためには、それぞれの国がGDP成長率をどの程度上げる必要があるかを示したグラフということになっている。
このグラフ、漫然と眺めているだけだと、「ふうん。スペイン、イギリス、フランス、ポルトガルといった国々は、相当がんばってGDP成長率を加速させる必要があるけど、アイルランドやギリシャは、意外にすんなり国家債務の削減ができそうじゃないか」と思わされてしまう。だが、表面的な印象論にとどまらずに、数値の中身まで読みこんでいくと、かなり非現実的な「予測」がまぎれこんでいるのだ。
たとえば、スペイン、イギリス、フランス、ポルトガル、フィンランドからなる上位5カ国は、そろって今後5年間のGDP成長率を年率で2%ポイント以上かさ上げしないと、国家債務の対GDP比率は削減できないということになっている。ちょっと目ざとく儲かるビジネスチャンスを探せば自分がやっている事業の収益も国民経済全体の規模も急拡大できる、発展途上国や新興国の話ではない。十分に成熟した先進国でGDP成長率を突然2%ポイントも加速させるのは、不可能に近い高いハードルといえるだろう。
目をむくような数値に出くわすのは、第7位アイルランドと第10位ギリシャに関する成長率予測だ。アイルランドが国家債務の対GDP比率を削減するには年率3.0%の成長が必要だが、2014~19年の平均成長率は3.0%とちょうど債務削減の最低条件ぴったりの成長ができることになっている。
また、ギリシャも債務削減には2.5%のGDP成長が必要だが、これまた不思議なことに、ぴったり同じ2.5%成長を達成できるという「予測」になっている。
ギリシャの場合、2010年以降、現在に至るまでこの高成長予測とは似ても似つかない低成長やマイナス成長にあえいできた。国際金融危機後の最悪期にはGDP規模がピーク時に比べて30%も縮小したのだが、最近になってやっと25%減というところまで「回復」した程度のお粗末な実績にとどまっている。
そして、ここまでに詳しくご説明したとおり、経済の血液ともいうべきカネの循環が悪くなり、高額所得の稼げそうな人ほど国外移住を急ぐという風潮が蔓延しているのが実情なのだ。
つまりこの先、経済成長率が好転する兆しはほとんどない。なぜ、こんなに楽観的すぎる数値が、なんらかの根拠を持った予測であるかのように国際金融市場で流布されているのだろうか。
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