だから日本の中古住宅はいまだに買いにくい

政府肝いりのリフォームローンが不調なワケ

フラット35(リフォーム一体型)では、リノベーションが抱える課題を克服するための新しい仕組みが導入された。

従来は、中古住宅を購入するときに見積もりしたリフォーム費用を加えて、融資承認した後に、床や壁を剥がして住宅の構造部分に重大な欠陥が見つかった場合、リフォーム費用が増えても金融機関は融資の増額に応じるのが難しかった。そこで中古住宅の売買時に、既存住宅売買瑕疵(かし)保険に加入したうえでつなぎ融資で決済。リフォーム工事で重大な欠陥が見つかった場合は保険金で構造部分の問題をカバーして、リフォーム工事が完了したあとに、フラット35の資金を支払ってつなぎ融資を返済、というスキームを整えた。

立ちはだかる割賦販売法の壁

そこに大きく立ちはだかったのが割賦販売法の壁だ。もともとフラット35は新規融資件数の約8割を銀行や信用金庫ではなく、モーゲージバンクが販売している。アルヒ(旧SBIモーゲージ)のように全国約170の店舗を独自に展開するモーゲージバンクもあるが、多くは住宅メーカーや工務店などを窓口として提携ローンでフラット35を販売してきた。

フラット35(リフォーム一体型)は、基本的に住宅ローンとリフォームローンを組み合わせた商品なので、割賦販売法の適用対象になると金融機関では判断。モーゲージバンク大手の日本住宅ローンなどが経産省に登録個別信用購入あっせん業者の届出を行ったが、住宅金融支援機構ではクーリング・オフ制度の対象となる事業者にはフラット35(リフォーム一体型)を取り扱わせないことを決定した。

通常のフラット35を取り扱う金融機関328社のうち、登録個別信用購入あっせん業者に届出しているのは、みずほ銀行、三井住友銀行、常陽銀行、横浜銀行、スルガ銀行、楽天銀行、日本住宅ローン、トヨタファイナンスなど15社(2015年6月末)。いずれもフラット35(リフォーム一体型)は取り扱っていない。

一方、フラット35(リフォーム一体型)の取り扱い金融機関55社のうち、モーゲージバンクはアルヒ、日本モーゲージサービスなど7社、地方銀行は山形銀行、足利銀行など12社、残りは信金・信組・労金だ。有力な金融機関がほとんど扱っていないのだから、政府肝いりの新商品でも売れないのは当然である。

最近は中古住宅の人気が徐々に高まってきており、優良物件の購入は早い者勝ちという状況も珍しくない。中古住宅の購入と同時にリノベーションを行うには、リフォームプラン決定からローンの融資承諾までを1週間程度で行わなければ優良物件を購入できないという「スピード勝負の世界」(スタイルオブ東京・藤木賀子社長)となりつつある。

消費者ニーズに対応するには、仲介業者、リフォーム業者と金融機関が緊密に連携してワンストップでサービスを提供できるのが望ましい。経産省でも提携ローンについて制度的な措置は送ったが、法令解釈の明確化などで取り組みに含みを持たせている。消費者保護と消費者サービス向上をいかに両立させるかがポイントとなっている。

大京グループが今月から中古マンションの物件紹介、リフォーム、ローンの相談、アフターサービスまでワンストップで提供する新サービス「チューコ&リフォーム スムーズパック」の提供を開始した。不動産仲介の大京穴吹不動産とリフォームインテリアの大京リフォーム・デザインが連携して行うが、リフォーム一体型ローンの相談はあくまでも金融機関の紹介だけで提携ローンではないという扱いだ。

「フラット35(リフォーム一体型)を含めて、10以上の金融機関を紹介するだけで、あくまでも金融機関は消費者に自ら選んでもらい、割賦販売法の適用除外になるように注意しながら運用する」(大京広報)

はたして大京の取り組みが割賦販売法の壁を突破して、消費者にとって利便性の高いワンストップサービスとなるのか。今のままでは、中古住宅市場の活性化に向けて金融機関がリフォーム一体型住宅ローンを積極的に融資するのは難しい。空き家対策の一助となるためにも、より一層リフォーム一体型住宅ローンが使いやすい環境を整えていく必要がありそうだ。

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