それでも、最近は先進各国とも政権維持のためにあらゆる経済対策を講じることもあり、近年は経済と株価が長期間にわたり下がり続けることはない。上述のように、もしウォール街の見方を当てはめれば、もし高値から20%下落すれば、伝統的には弱気相場の入り口になる。だが、近年はそうではなくて、底値(買い場)になる例のほうが多い。
そこで、あらためて今回の日経平均の下げの原因と現況を見てみよう。まず、下げのいちばんの原因は、1ドル=161円台後半から一気に146円台まで進んだ円高だ。これで円安による日本企業の業績上方修正期待が一気に剥落した。
ただ、反対側から見れば、年内のアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の利下げと、日本銀行の利上げを複数回分急速に織り込んだ結果であり、今後のドル円相場は1ドル=145円前後に落ち着くと推測される。よって、企業業績の上方修正が下方修正にまで変わることまでは考えられない。事実、日経平均の予想EPS(1株当たり利益)は8月2日現在で2410円と、史上最高を更新している。
2番目の理由は、「景気のソフトランディング期待が固まらないアメリカの景気」だ。だが、民主党の大統領選挙候補者に決まったカマラ・ハリス副大統領の人気が予想外に上昇、一時は返り咲き確実と見られていた共和党のドナルド・トランプ候補との差は縮まっている。こうした中で、両候補にとって「景気減速」は許されることではない。どちらの候補が当選しても、景気は維持されるだろう。
3番目は、アメリカのテック株のさらなる下落がナスダックを弱気相場へと落とし込む恐怖だ。だが前述のように、史上最高値からの下落率は10.0%で、すでにテック株は十分な調整をしている現在、さらに大きく下げるとは思えない。人気が先行した反動安であって、AI半導体が今後の経済に不必要になったためではない。
今後の抵抗力は強そうだが日経平均は短期的に下げすぎ
日本の株式市場の上昇は、デフレ脱却相場と、別次元のテック相場の2本立てによって今まで支えられてきた。この間、日本の個人投資家の多くは値がさ株が多いこともあり、テック株の大商いには参加できなかった。逆に言えば、日本のテック株相場が終わったとしても、痛手は軽い。個人好みの相場になることで「陰の極」となる可能性もある。
それでなくても、日経平均は短期的に上げすぎた分、今度は下げすぎだ。7月11日の移動平均線からの乖離率を見ると、25日移動平均線が+6.5%、75日移動平均線が+8.0%となっていた。だが、今やそれぞれ-9.8%、-7.9%と十分すぎる下げとなっている。
ただし、移動平均の抵抗線としてのエネルギーは、支持線としてのエネルギーの何倍も大きいことも認識しよう。つまり各移動平均線を上回るためには、明確な買い要因を待つ必要があるということだ。
とにかく相場はこれからも続く。その相場に負けないためには、目先の動きに振り回されることなく、かつ変化に気づきながら対応することだ。そうすれば、おのずと展開は開けてくると考える。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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