【産業天気図・建設機械】かつてない世界同時建設機械ブーム続き、当分「快晴」

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建設機械の天気は当面「晴れ」とみられる。建設機械は依然、海外中心に旺盛な需要が続き、建設機械出荷額の97%をカバーしている日本建設機械工業会の見通しでも今06年度は1兆9788億円と、過去最高だった1990年度の1兆9716億円を抜き、16年ぶりに過去最高を更新する見通し。翌07年度についても、さらに出荷額は伸びる見込みで、同工業会では初の2兆円台乗せを予想している。
 世界的に建設機械需要が底打ちしたのは02年度。米国経済がITバブル崩壊の痛手から早期に底入れしたことと、中国経済が本格的な拡大期入りした結果だ。米国では住宅や都市再開発向けに建設機械が伸び、中国向けは産業インフラ関連が大きく伸び始めた。加えて鉄鉱石など資源開発も旺盛で、大型の鉱山機械需要が上乗せされている。ここへ来て米国の住宅投資はさすがに減速が鮮明になってきたが、一方で道路投資は連邦予算が増額されており、建設機械需要は落ちていない。中国も08年の北京オリンピック関連の建設投資や、その後に控える10年の上海万博関連投資などがあり、大きく減速する可能性は薄い。
 これら好環境の下、建設機械メーカー各社の収益は大きく伸びている。トップメーカーのコマツ<6301.東証>の場合、02年度は営業損益段階で132億円の赤字だったが、01年6月就任した坂根正弘社長が人員削減を含む経営改革の大ナタを振るい、損益分岐点が大幅に低下。翌年から収益が急浮上し、05年度の営業利益は1764億円となった。坂根社長の基本的認識は「原油に代表される1次産品価格の上昇が途上国の産業インフラ投資を刺激している。そのため建設機械は新しい成長産業になった」というもので、この大波に乗るべく徹底的した経営の「選択と集中」を断行している。
 これは、言い換えると徹底的な「本業回帰」だ。例えば、主要部門の1つだった半導体材料部門からの撤退も、その一つ。米国にあった半導体材料と多結晶シリコン事業を売却したほか、この6月には子会社のコマツ電子金属<5977.東証>についても、世界第2位の半導体材料メーカー、SUMCO<3436.東証>が提案したTOBに応じ、売却する決定をした。一方、集中というか「攻め」の部分としては、07年1月稼働の予定で、茨城県常陸那珂港の隣接地に大型鉱山機械の新工場を建設することを決めている。
 こうした状況はライバルの日立建機<6305.東証>も同様で、旺盛な建設・鉱山機械需要に対し、主要部品の製造工場である霞ヶ浦工場を5月に増設した。しかし、この増設だけでは不足が解消しない油圧コンポーネントの増産のため、さらに07年1月着工、8月稼働予定で新工場を茨城県ひたちなか市に建設する。08年には大型鉱山機械の新工場の建設も予定している。
 一点の曇りもないような建設機械業界だが、問題があるとすれば、現状のブームが、かつてない世界同時ブームのため、その持続性について業界各社の見解が分かれる点だ。特に、関連部品メーカーがどこまで大手メーカーに連動した増産投資を行うかが焦点となろう。一部でも供給ネックが生ずれば、建設機械の生産計画は修正を迫られざるを得なくなる。
【日暮良一記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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