【産業天気図・工作機械】月間受注はなお記録更新中。が、自動車向けの減速度合い深まる

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晴れ渡った空に1つ2つ、「不安の雲」がぽっかり浮かんできた−−。どうやら、工作機械業界は天気の変わり目に来たようだ。
 統計上、工作機械の受注は相変わらず堅調だ。この7月で工作機械の受注は46カ月連続して前年水準を上回った(日本工作機械工業会)。この限りでは、過去最高の45カ月連続を上回り、超長期の“ブーム”が続いている。だが、「不安の雲」とは、昨年までの最大の牽引車である自動車向けが月を追うごとに減速の度合いを強めている点だ。とりわけ7月の受注は前月比18%減。前年比では35%減の大きな落ち込みとなった。
 にもかかわらず、全体の月間受注が連続記録を更新しているのは、電機向け(前年比18%増)に加え、鉄鋼(同18%増)や造船・重機(同38%増)など「重厚長大」向けが盛り上がっているからだ。しかし、この“絶好調グループ”も子細に見ると、電機の“希望の星”=液晶TV向けが上期失速するなど、安定性を欠いてる。また、9月11日に内閣府が発表した7月の機械受注統計は前月比17%減となった。工業会統計との「不整合」が業界を慌てさせたが、これは“好調”のはずの「重厚長大」関連が内閣府統計では前月比急落したため。「不整合」は、下期受注の先行き波乱を予感させるものだろう。
 それでも今のところ、工作機械各社は楽観姿勢を崩していない。これは(1)豊富な受注残に支えられ、今年度一杯の仕事量は確保済みであるうえ、(2)下期には自動車向けの受注が復活するという期待感が強いこと、さらに(3)ユーロ高で従来、日本の最大のライバルだった欧州市場でのシェア拡大が進んでいること−−などがあると思われる。たとえば板金マシンのアマダ<6113.東証>は前期も欧州売り上げを28%伸ばしたが、この1~6月も引き続き23%増を達成。プレス機械のアイダエンジニアリング<6118.東証>の第1四半期(4~6月)の欧州売り上げは前年比34%増となり、前期5.5億円のイタリア子会社は小幅ながら黒字転換した。
 しかし、(2)の自動車関連の受注復活は、あくまで業界の希望的観測だ。とりわけトヨタ自動車<7203.東証>は、ここ数年の大投資の調整期として今下期を位置付けているように見られる。その一方、工作機械各社は大手を中心に設備増強を図ってきており、来年度には需給ギャップが表面化する懸念もある。
【梅沢正邦記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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