いや、それより問題はハリス氏に勝ち目があるのかということだ。例によってRCP(リアル・クリア・ポリティクス)のデータを確認すると、8月1日の本稿執筆時点で「トランプ対ハリスの支持率」 は48.2%対46.2%とその差はわずかに2ポイントとなっている(最新の状況はHP参照)。
「ベッティング・オッズ」 で見ても、トランプ勝率52.0%に対してハリス勝率は42.0%(同時点)といい線まで迫っている(最新の状況はHP参照)。これも激戦州における「トランプ対ハリス」の世論調査もじょじょに公開されつつあるが、これまた「横一線」と見ていいようだ。
大化け期待の一方、マネジメント能力「?」のハリス氏
これまでバイデン政権の副大統領としての彼女は、決して目立つ存在ではなかった。たまに話題になるときは、「またも補佐官が辞めた」といったマネジメント能力への疑問を感じさせるニュースばかり。南部国境問題の取り締まりを任されたものの、不法移民は一向に減らなかったし、初の外遊でグアテマラを訪問した際には、現地の人々に向かって「アメリカ国境に来ないで」と言ったことが内外で顰蹙を買った。
真面目な話、副大統領は難しいポストなのである。あんまり無能では困るが、かといってバリバリ仕事をして大統領よりも目立つのもマズい。その辺の事情は、オバマ政権下で2期8年も副大統領を務めたバイデン氏自身がよく知っている。要はこれまでの3年半、ハリス副大統領をあまり目立たせず、傷もつけないように配慮してきた。結果として多くの国民が、彼女のことをよく知らずにここまで来たのである。
そんなハリス氏が、今や「大化け」しつつある。特にこれまで政治に対する関心が薄かった若年層とマイノリティ有権者が熱をあげている。彼女自身も吹っ切れたように、トランプ氏への対決姿勢を打ち出し、歯切れのいい演説を行っている。話の途中で急に大声で笑い出すという癖までもが、妙な高評価になっている。いや、そもそも本来のアメリカ大統領選挙とは、こんな風に候補者を鍛えて化けさせるシステムだったのではなかったか。
とはいえ、彼女はカリフォルニア州の検察長官から、2016年に上院議員に転じたというキャリアであり、政治家としては遅咲きの部類に属する。マネジメント能力にも疑問符が付く。経済や外交などの政策構想もほとんど未知数だ。今はハネムーン期間中でも、この後は共和党による攻撃も厳しくなるし、メディアやネットによる粗探しも始まるだろう。トランプ氏に勝って女性初の大統領になる、というハードルは容易ならざるものがあるはずだ。
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