円高是正を急がなければ中部地方の空洞化は加速する--中部経済連合会会長 三田敏雄
--円高対策、電力問題以外にも多くの課題が山積していますが、政府はどのような政策課題を優先するべきでしょうか。
税制改革も重要だと考えている。日本は法人税の実効税率が40%をちょっと超えている。欧米では約30%、東南アジア諸国では約20%。こういうところと競争ができるのかどうか。税制大綱では5%下げるとなっているが復興税制との兼ね合いでしばらく我慢しなければならない。しかし、いつからどれくらい引き下げるか、ということは早めにメッセージとして出すべきだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)については、絶対に参加を表明するべき。今の日本は、欧州、中国、米国などに関税で負けてしまっている。だからTPPには、いち早く入っていかなければならない。いろいろな議論はあるが、議論はその枠組みに入って行わなければダメだ。議論をしないまま放置して、後から入るほうがもっと大変だ。
もちろん、社会保障の仕組みを見直すことも重要だ。今の若い人たちは将来が不安だから、子どもを育てられなくなり少子化が進んでいる。少子化は最も懸念すべき課題だと思う。将来に不安を持たずに生活できる仕組みが必要だ。難しい問題も、しっかりと期限を区切って、議論していく必要がある。
課題は多いが、まずは、円高是正が最優先だ。海外へシフトできる会社は1次下請け、2次下請けくらいまでで、それより小規模な企業はついていけない。多くの会社が立ち行かなくなってしまうおそれがあり、中部のモノづくりの強みが失われる。そのことを心配している。
100点の政策はない バランスが重要
──難題が多い中で、野田佳彦首相には期待が持てそうですか。
野田首相は来年夏に向けて速やかに原発を再稼働させていく、という発言もしている。じっくりと考えてもらい、将来の日本のために適切な判断をしてもらえれば、というふうに思っている。