円高是正を急がなければ中部地方の空洞化は加速する--中部経済連合会会長 三田敏雄
──浜岡原発の停止により夏場の電力不足が懸念されましたが、乗り切ることができました。
一般家庭も企業も、節電に協力してくれたおかげだ。まずは日本自動車工業会が工場稼働を土日にシフトして木金を休みにしたことが大きかった。鉄鋼会社でも、電力を大量に使う電炉の操業については13時から16時までの需要ピークを避けてくれた。操業時間のシフトによる生産性の低下はほとんどなかったようで、その点もよかったと思う。
が、電力不足はこの夏で終わる話ではない。震災直後から夏場まではサプライチェーンの復旧という課題がありフル操業ではなかった。前倒しで復旧が進み、これからは多くの会社が増産態勢に入っていき、冬に向けて電力はまた厳しい状況になる。冬場も、生産に影響のない範囲で節電の努力をお願いする。
──冬を乗り越えた後は、来年夏の電力不足が課題になります。
定期点検のために停止している原発が再稼働できなければ、電力不足は続く。もちろん、原発を再稼働させるためには、安全性の確認が大前提。安全であることを確認した発電所については、速やかに稼働させることが必要だ。そうしなければ産業の足を引っ張り続けることになる。
そのうえで、中長期の課題として、政府がしっかりとしたエネルギー政策を立てる必要がある。日本はエネルギーのない国であり、96%を輸入に頼っている。そうした中で安定的に安価な電力を作り出すには、どのような電源構成がいいかを検討し、目標を立てるべきだ。
低炭素の電源として注目されている液化天然ガス(LNG)火力を増やしていくとしても、新設には立地調査から稼働まで20~30年かかる。短期的には、安全を確認した原発を速やかに稼働させることが、どうしても必要になる。