無事故続く台湾新幹線--安全第一こそ日本流、大惨事招いた中国新幹線との違い
7月23日に起きた中国の高速鉄道事故でにわかにクローズアップされたのが、台湾の高速鉄道の優秀ぶりである。最高時速は300キロ。台北-高雄(左営)間を1時間36分で駆け抜ける。2007年の開業以来、目立ったトラブルはない。日本の新幹線技術が使われているため、「台湾新幹線」とも呼ばれる。
中国の事故後、同路線を運営する台湾高鉄の担当者は取材メディアに対して、「われわれは日本と同じシステムを使っているから、中国のような事故はありえない」と語ったという。確かにそのとおり。だが、台湾新幹線には欧州の技術が混在しているのも事実である。この点では、日本、ドイツ、フランスなど各国の技術を取り入れた中国の高速鉄道と同じだ。では、台湾で安全性が確保されているのはなぜか。そのためには、台湾新幹線の成り立ちを振り返る必要がある。
台湾の高速鉄道プロジェクトは、フランスの高速鉄道「TGV」やドイツの同「ICE」を擁する独仏連合と、新幹線を擁する日本企業連合の間で争われた。当初は価格面で有利な提案をした独仏連合が第1交渉権を得て、欧州仕様で進み始めた。だが、1998年の独ICEの脱線転覆事故、99年9月の台湾の大地震(921大地震)などの影響もあり、“地震の国”日本で開業以来無事故を続ける新幹線が見直され、99年12月の車両・架線・信号などの入札では一転、日本企業連合が受注に成功した。だが、その代償として、欧州式の基本設計に新幹線を合わせるということになり、異なる技術の組み合わせで苦労することになってしまった。
運転士が足りず、当初は間引き運転
台湾新幹線700Tは日本の東海道・山陽新幹線700系がベースだ。しかし、その外観は微妙に異なる。当時の台湾高鉄の幹部が700系のカモノハシ型の先頭形状を嫌ったという説もあるが、そんな好き嫌いの次元ではない。これも日欧の技術の混在がもたらしたものだ。