ネトフリで話題「地面師たち」に何だかモヤる背景 配信開始からSNSでの注目度は高いものの…
キャスト陣には、そうそうたる顔ぶれが集結。地面師グループのリーダーを豊川悦司、交渉役を綾野剛、情報屋を北村一輝、手配師を小池栄子、法律屋をピエール瀧、ニンベン師を染谷将太、さらにだまされる大手デベロッパー幹部を山本耕史、地面師たちを追う刑事をリリー・フランキーと池田エライザが演じる。
本作は、それぞれ専門的な技術(能力)を持つプロフェッショナルの集団をオールスターキャストが演じる、豪華エンターテインメント大作とも言えるだろう。そこからは、『オーシャンズ11』や『アベンジャーズ』といったハリウッド大作を思い起こさせる。
シリーズ前半まで視聴して感じたのは、そのキャラクター設定から物語構成、映像演出まで、完成度の高いエンターテインメント大作になっていて、まさにハリウッド大作や日本の大手映画会社のエンターテインメント大作そのものということだ。
不穏さや不気味さを感じられない
実際の事件をもとに入念なリサーチをしているだけあって、リアリティーがあり、手に汗握る緊迫感はある。
ただそれが、ハリウッド大作のそれなのだ。クオリティー高く作られた安定感と安心感はある。だがその完成度の高さが逆にクライム・サスペンスとしての退屈さと結びついてしまっている感があり、モヤモヤしてしまった。
圧倒的な見応えはあるものの、インディペンデント映画にあるような、何が起きるのかわからない不穏さや、不気味さを内包する気味の悪さ、居心地の悪さが欠けている。ハリウッド大作のドキドキワクワクではない、そういった恐ろしさ、怖さこそ、この物語に宿っていてほしい空気感だったと感じた。
日本の大手映画会社は、固定ファンのいる人気原作を人気俳優のキャストで実写映画化する、誰もが楽しめる予定調和のエンターテインメント大作をこの20年間、作り続けている。もちろん原作やストーリーは作品ごとに違うが、やっていることは一部を除いて本質的に変わらない。
20年前は興収50億〜100億円のヒットになっていたが、いまは10億〜20億円台。エンターテインメントに求める若者の感性や感覚が変わっても、ルーティンは続いている。
それ自体は、マスに向けたエンターテインメント大作に必要な要素であることも事実だ。『地面師たち』は、従来の日本の大作映画のような完成度の高いエンターテインメント作品に感じる。大作映画として見ればおもしろい。ただ、角がなく、丸い。作品性がとがっていないのだ。
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