英国政府とBBC、「壮絶バトル」の一部始終 ライセンス料制度廃止や規模縮小を巡り攻防

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BBCのウェブサイトは「まるで放送局というより、新聞だ」、「その野心は帝国主義的だ」――。BBCの朝のニュース番組(5日)に出演したオズボーン財務相はBBCに対する敵意をあらわにした。

その後、BBCのトニー・ホール会長は政府と秘密の交渉をしていたことを明かした。ライセンス料制度の維持やインフレ率との連動を戻すことを確保することで、高齢者のライセンス料肩代わりを引き受けたという。高速ブロードバンドの敷設関連費用を負担する義務も2020年までに終了する見込みとなった。

「困難な時に、BBCはよい交渉をした」(ホール会長)。

しかし、BBCトラスト(NHK経営委員会に当たる。視聴者の代表としてBBCの活動内容を査定・決定する)ロナ・フェアヘッド委員長は決定が密室で行われたことに怒り心頭。財務相への公開書簡の中で「BBCの運営資金の将来についての大きな決定が、国民が全く関与しない形で行われたことに失望した」と書いた。

野党労働党の議員で元文化大臣だったベン・ブラッドショーはBBCによる高齢者用ライセンス料の負担は、「まるでBBCが年金省の一部門になったようだ」と批判した。

特許状更新のための正式な交渉が始まる前に、密室で政府とBBCが決めてしまった経緯は、BBCがあたかも政府の仕事を手伝っているように見えた。「悪い前例を作った。BBCの独立性がおかされた」(元BBC会長バート卿)。

国民の48%がライセンス料制度を支持

14日、BBCは年次報告書(2014−15年度)を発表した。この時までに、BBCの娯楽番組「ストリクトリー・カム・ダンシング」や「ボイス」に対し、公共放送なのに「視聴率競争をしている」「民業圧迫」という批判が出ていたことから、ホール会長は「BBCはすべての視聴者のために番組を作る」と宣言した。

初代会長リース卿がBBCの目的を「情報を与える、教育する、楽しませる」と定義したことに言及し、「情報を与えない、教育しない、楽しませないBBCは国民が知り、愛するBBCではない」、「国民が私たちの株主だ」。

年次報告書に掲載された調査によると、48%がライセンス料制度を支持し、29%が広告収入による、20%がサブスクリプションによる運営を支持していた。「こんなに支持者がいる」――会長はそう言いたげだった。

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