英国政府とBBC、「壮絶バトル」の一部始終

ライセンス料制度廃止や規模縮小を巡り攻防

年間約37億ポンド(約7400億円)に上るライセンス料収入は、他のメディアから見ると、羨ましい限りの大きさだ。1920年代の創立時から導入されたこともあって、その廃止や他の制度への移行は、BBCの存在の根幹への挑戦とみなされる。

2014年11月、(当時の)連立与党の1つ、保守党のある議員はライセンス料制度を廃止し、サブスクリプション制の導入を主張する公開書簡を、放送業界を所轄する文化・メディア・スポーツ省の大臣に送った。「巨額のライセンス料を運営資金として使うBBCは英国の放送市場を不当に歪曲している」(書簡より)。

今年2月末には、下院の文化・メディア・スポーツ委員会が「BBCの将来」と題する報告書を出している。冒頭の「要約」部分で、「過去2−3年、BBCは時として自らが招いた間違い」に見舞われてきた、と指摘した。

「間違い」とは、具体的には人気司会者ジミー・サビル(故人)の大規模な性犯罪を察知できなかったこと、2011年末にサビル氏の犯行を追求する番組の制作を中止したこと、12年末には事件に関する調査報道番組で大きな誤報を出したこと、これを受けて経営陣トップが54日という短期間で辞任せざるを得なくなったこと、巨額を投じたデジタル・プロジェクトを中止したことなどを指す。

報告書はサブクスリプション制度を「選択肢の1つ」とし、抜本的な組織改革を提言した。サブスクリプション制度導入への肯定は、BBC経営陣や支持者から見れば、「小さなBBC」にすると、という脅しにも見えた。しかし、ここまでは、いわば前哨戦だった。

高齢者のライセンス料を負担するのはBBC

本格的な戦いは5月の総選挙後、保守党単独政権が成立してから、である。小さな政府を目指す保守党は前政権から続く緊縮財政政策を続行している。公的組織の1つであるBBCにも大幅な費用削減のお達しが回ってきた。

今月5日、サンデー・タイムズ紙に出たある記事が読者の目を引いた。「またか?」――BBCの擁護者だったら、そう思ったかもしれない。8日にオズボーン財務相が発表予定の予算案の中で、75歳以上の視聴者のライセンス料の支払いをBBCが負担することに決めた、という。現在、税金が負担している額で、6億5000万ポンド(約1300億円)に上る。

その代わり、見逃し視聴サービスのプラットフォーム「アイプレイヤー」の利用をこれまでは無料のところを有料にすることを認めるという。また、一時停止となっていた、ライセンス料のインフレ率との連動を戻す。

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