浦和レッズ、売上高100億円突破後の次の一手 田口誠社長が見据える経営戦略と将来ビジョン

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田口社長が語るように、スタジアムが重要なコンテンツなのは間違いない。今年市街地にオープンしたエディオンピースウイング広島も明らかに客層の変化が起きているという。

1試合平均観客数もホットスタッフフィールド(広島ビッグアーチ)を使っていた昨年に比べると9000人増と顕著な変化が見られる。埼スタも2001年に開場してから23年が経過し、アクセス問題は依然としてあるが、もっと人を呼べる場所になるはず。そこは浦和レッズ全体でアクションを起こしていくという。

「一方で、もともとの本拠地だった浦和駒場スタジアム周辺の人々から『レッズが遠い存在になった』という声をいただくこともあり、浦和駅周辺地域の熱量の維持にも注力しています。

浦和というのは広島、静岡に並ぶ『サッカー御三家』で、地域住民によるサッカーに対する思いが非常に強い。その熱意を大事にしながら、地域とともに成長を考えていくことがこれまで以上に重要だと感じています。

私個人としては、さいたま市内にバラバラになっている複数あるクラブの拠点を1つにして、もっと機動力のある組織にしていきたいという考えがあります。それは容易なことではないですが、クラブ内により大きな一体感や推進力が生まれますし、クラブをさらに発展させる原動力になると考えています。

アカデミーの練習場やトレーニング施設の老朽化、スタッフの的確な配置など見直すべきことも少なくないですが、まずは1年後のFCWCを1つの目標に取り組みます」と田口社長は意気込みを口にする。

オイルマネーを投じる中東クラブとの厳しい戦い

現時点で野々村チェアマンが提唱する売上高200億円を達成できる可能性があるのは浦和くらいだろう。そのためには、毎年ACL王者となり、FCWCに恒常的に参戦することが求められてくる。

だが、潤沢なオイルマネーを武器にサッカーに巨額投資をしているサウジアラビアやカタールなど中東諸国の成長は凄まじい脅威だ。24-25シーズンのACLからは準決勝・決勝の会場がサウジアラビアに固定され、仮に浦和が勝ち進んだとしても完全アウェーを強いられる。しかも、アジアサッカー連盟の中では外国人枠撤廃が議論されている模様。そうなれば、資金力ある彼らはビッグネームを次々と買い漁るだろう。

「そうなるとJクラブにとっては大変な逆風になります。それを阻止するためにJFAやJリーグがアクションを起こすことも重要です。5年後、10年後の我々を取り巻く環境には読めないところもありますが、取り組むべきことははっきりしています。ホームタウンを大事にしながら、クラブ力を引き上げていく。

私もいつまでトップにいるかわかりませんが、いずれはプロパーの社長が経営をリードするようなクラブになってほしいという理想もあります。私も責任を持ってやっていきます」

田口社長の情熱とリーダーシップで浦和は2025年以降、再び100億円クラブとなり、経営規模を引き上げていけるのか。その動向を冷静に注視していきたいものである。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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