「ストーリー」には、強烈無比なパワーがある コミュニケーションを円滑にする「物語力」

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この痛ましく、そして心を揺さぶるストーリーは、前回ご紹介したアメリカの非営利団体StoryCorpに寄せられた元消防士ジョン・ビジアーノさんの実話だ。「個人が持つかけがえのないストーリーを記録し、広め、後世に残していく」ことをミッションとするStoryCorp。駅などにブースを設け、その中で市井の人々にかけがえのない人生の1コマ、1ページをストーリーとして語ってもらい、記録を残そうというプロジェクトだが、歴史的な事件、災害などについては特に、後世にその記憶を伝えるべきという考えから、現場にブースを設けて、被災者や被害者の家族に話を聞くといった取り組みを続けている。

2005年には世界貿易センター跡地の近くにブースを設けて、残された人々の悲嘆に耳を傾け、同じようにハリケーンカトリーナの被災地では、勇敢に戦い抜いた人々の声を集めた。その根底には歴史の生き証人の貴重な証言が時代の波にもまれてかき消されてはならない、という思いがある。

記憶を引き継ぐ社会実験

日本では、たとえば東日本大震災の被災者や残された家族の声を一部のメディアや自治体が取材などの形で記録として残しておくケースはあるようだが、草の根レベルで幅広く、拾い上げようという動きはあまり聞かない。戦争や災害の記憶の風化が問題視される中で、StoryCorpの取り組みはひとつの社会実験として大変、興味深いものと言える。

アメリカでは特に、歴史的イベントの多くは単なる事実やデータを集めた話ではなく、登場人物たちのパーソナルなストーリーとして語られ、読み継がれてきた。学校の歴史の授業では、事実やデータを覚えるといったことはいっさいない。その代り、歴史に出てくる人物像を徹底的に検証する。たとえば、初代大統領ジョージ・ワシントンの妻はどういう人間だったのか、彼女の考え方がどのように歴史を変えたのかを自分なりに研究し、最後には彼女の役を劇として演じるところまで行き着く。想像力で、人物像はいかようにも解釈してもいい。つまりは、歴史=ストーリーであり、子供たちは歴史の授業の中でもストーリーテリングの技を磨いていくのだ。

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