ファナック「創業家プリンス」が突然退職のなぜ 対外的な人事発表はなく、業界に広がる驚きの声
安部氏は協働ロボット「CRXシリーズ」の立役者とされる。関連の特許は、安部氏を筆頭者として登録されているが、そこには当時ロボット事業本部長だった清典氏の名前はない。さらにいえば、2018年以降、清典氏がファナックとして出願した特許はなく、ロボットの開発現場から離れていたとも推測できる。
協働ロボットは白く小型で、安全柵を必要とせず人間と並んで作業できることから、中小企業をはじめ、食品やサービス産業など新たな領域での活用が拡大した。2021年に「ロボット大賞 経済産業大臣賞」など、数多くの賞も受賞している。
黄色の「産業用ロボット」で世界4強の一角を占めるファナックが、近年力を注ぐのがこうした白い協働ロボットの拡販だ。7月、名古屋で開催されたロボットの展示会では、ファナックのブースの半分以上を白い協働ロボットが占めていた。
建物も黄色から白色に塗り替え
工場や営業車両、作業用ジャンパーもすべて黄色。創業以来、黄色がコーポレートカラーで知られるファナックだが、最近はロボットだけでなく、建物でも黄色以外が増えている。
ファナック社員によると、新しい建物だけでなく、既存の建物もわざわざ塗り替えているようだ。若手社員が住む社員寮は黄色から「CRXシリーズ」のような白色に緑のラインが入った配色に変わったという。
周辺環境への配慮かコスト削減か、その意図はわからないが、創業家への世襲がなくなった今、さらに黄色からの脱却が進む可能性もありそうだ。
カリスマ創業者だった清右衛門氏は2020年に95歳で老衰のため死去した。現在の善治会長(76)はその息子だが、トップ就任以来、掲げてきたのは「経営体制の刷新」だ。2013年に初めて社外取締役を招聘した一方、取締役の人数を削減。2021年には清典氏も取締役を外されている。
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