ファナック「創業家プリンス」が突然退職のなぜ 対外的な人事発表はなく、業界に広がる驚きの声

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その後は主力部署であるロボット事業本部長として、製造業向けIoTプラットフォーム「フィールドシステム」の開発を率いた。工場の生産設備をネットワークで接続し、情報を共有することで動作学習や故障予測を行うシステムだ。産業向けIoT基盤の先駆けとなるプロジェクトであり、当時はシスコシステムズやNTTグループとの協業などで脚光を浴びた。

2016年に「フィールドシステム」を発表する稲葉善治社長(右)と稲葉清典・専務取締役ロボット事業本部長(いずれも当時の肩書)(撮影:尾形文繁)

2019年の展示会「CEATEC」では、主力のロボットを展示せず、「フィールドシステム」を全面展開したことでも話題となった。

だが現在、その存在感は薄く、収益にも貢献しているとは言い難い。社内では「当初の期待ほど導入が進まなかった」という見方でおおむね一致する。

システム営業を担う社員は「ファナックの生産設備とは親和性があるが、顧客が進んで使いたいと思うキラーコンテンツにはなっていない」とこぼす。

稲葉家とかねて親交のある人物は「稲葉会長は(フィールドシステムを)息子の出世への花道にしようとしていたが、うまくいかなかったのでは」と語る。

”白い”ロボットで成果を出す生え抜き

清典氏は今年3月にロボット事業本部長を外れ、会長補佐付になっている。清典氏の後任としてロボット事業のトップに就任したのは、常務執行役員・ロボット研究開発統括本部長の安部健一郎氏だ。

安部氏が開発の立役者とされる白い協働ロボット(記者撮影)

山口賢治社長(55)と同じ1993年入社で、長らくロボット機構の開発に携わってきた、生え抜きの技術者だ。2015年に、執行役員に就任しており、清典氏のそばで仕事をしてきた人物でもある。

安部氏について、前出の取引先部品メーカー役員は「最近はいつ工場に行っても、渉外に対応するのは安部さんだ。一見、物腰柔らかい雰囲気だが、技術のことになると一流だ」と、高く評価する。清典氏が去った今、安部氏を次期社長候補として見る向きも増えているようだ。

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