アメリカの新聞の多くは昔から支持候補を明らかにしているとはいえ、SNSプラットフォームの巨大な存在感は、少数のネットワーク局が放送する夜のニュース番組に視聴者が釘付けにされていた黎明期のテレビに近い。昔ながらのニュースメディアがしぼむ中、消費者、中でも若者に対するSNSの影響は著しく拡大している。
コーネル大学技術政策研究所の所長サラ・クレップスはマスクとXについて、「彼の政治的見解が何であるかはかなり明確だ。人々は今、オンラインで時間を過ごしたい場所について、さらなる透明性と情報を手にした上で選択を行えるようになっている」と述べた。
マスクは長年、自身の政治的信念を公にすることを控えていたが、それは主にスペースXの経営権を握っているためだった、と同社の元幹部3人が語った。このロケット企業は、政府の宇宙開発契約を勝ち取るためにライバルと熾烈な競争を繰り広げていた。
日和見で転換し続けるマスクの政治姿勢
元幹部3人によると、2016年11月の大統領選挙の数日前、スペースXの社長兼最高執行責任者(COO)グウィン・ショットウェルがマスクにCNBCのインタビューを受けるよう促した。
インタビューの中でマスクは、熱のこもらない支持をヒラリー・クリントンに対して表明し、トランプは「適切な人物ではない」と感じていると述べた。
そのインタビューでマスクは、「彼はアメリカの評判を高めるような人格を有していないようだ」とトランプについて言い、クリントンの経済政策と環境政策は「正しいもの」だと語った。
スペースXは過去10年間で連邦政府から147億ドルのロケット打ち上げ契約を獲得し、今では政府から頼りにされるようになっていることから、政治的圧力が大幅に和らいだ、と元幹部らは話す。