民主党の牙城だったはずの「聖地」に静かな異変が生じている。
吹きすさぶ風と人けのない通り。9月中旬に訪れたサンフランシスコのX(旧ツイッター)本社とその周辺は、もぬけの殻になっていた。
Xの前身であるツイッターは、2006年にカリフォルニア州の同地で誕生した。ツイッター減税と呼ばれる行政の税制優遇措置を受ける見返りに、同地にとどまる交渉を市と行うなど、地域活性化を目指すサンフランシスコにとっては特別な存在だった。
しかし、22年に同社を買収したイーロン・マスクは24年7月、テキサス州の州都オースティンに本社を移すことを表明。9月中旬はすべての社員がこの本社で行う業務を終えたタイミングだった。
「もう誰もいないね、勝手に入ってくれよ」。マーケットストリート1355番地のがらんどうのオフィスには、守衛らしき人物が1人いるだけだった。「次にどの企業がここに入るかも決まっていない。1階にあった瀟洒(しょうしゃ)なレストランは、かつて社員たちでにぎわっていたけれど、歴史はもう変わったんだ。もうおしまいだ」。
保守思想に傾くマスク
シリコンバレーを含む米西海岸エリアは、テクノロジー企業の聖地として知られる。政治的にはブルーステートに位置し、民主党寄りといわれリベラル派が多い。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら