紅麹で健康被害「小林製薬」見せかけの企業改革 「ガバナンスの優等生」は形だけだったのか
小林製薬が大阪工場でGMP認定を取得していなかったことは、法的に何の問題もない。ただ客観的な記録の不備が、原因究明の遅れにつながっている可能性がある。
1つ明らかなのは、小林製薬が紅麹原料を自社で製造する医薬品とは別の基準で製造してきたということだ。同社は「ナイシトール」や「命の母」などのOTC(一般用医薬品)を製造する。OTCは当然GMPを取得した製造ラインで生産されているが、紅麹原料ではそうした配慮はなかった。
原因物質については、別の可能性も指摘されている。紅麹が特殊な環境下で製造され、「消費者庁への届出実績がない新規の機能性関与成分」(消費者庁の公表資料)であったことだ。前出の池田氏は「小林製薬の製造方法は特殊で、特異な紅麹菌を使用していたほか、紅麹を約50日と通常より長く培養していた。その過程での汚染や、まったく別の物質を生み出したことも国の調査で報告されている」と指摘する。
なぜ通常より長く紅麹を培養していたのか。小林製薬は「有用成分の適正量を担保するため」だと説明する。ただ独自の製法や管理手法が、未知のリスクを引き起こしたおそれがある。
月1回新製品のアイデアを義務づけ
小林製薬は1886年創業のオーナー企業だ。現在でも創業家が株式の約3割を保有する。
社長の父である小林一雅会長は、社内の反対を押し切りヒット商品を誕生させてきたアイデアマン。
対して小林章浩社長は、創業家の6代目として13年に社長就任。「今後は、会長なしでもやっていけるように会社を変えていく必要がある」と、かねて危機感を語ってきた。その中で、小林製薬の社員は毎月1回、新製品のアイデアか業務改善案を出すことを義務づけられている。
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