松下、YKK、大震災 街の電器屋は逆境で育つ--ケーズホールディングス会長 加藤修一《下》
ライバルの家電量販店幹部らの反応は、冷ややかだ。「社長交代というが、代表権も維持してCEOに居座る。辞める気など毛頭ないに決まっている」。
加藤は「親父も65歳で会長に退いた。経営陣の若返りが必要」と説明するが、父は78歳まで代表取締役会長として加藤を支えていた。息子の加藤も、同じ道を歩む可能性は高いだろう。
「経営は終わりのない駅伝競走だから、ランナーを育てるのがトップの仕事。ケーズは、誰でも経営できる会社にしないといけない」と加藤は言う。役員には「トップになった途端に豹変して、店舗数を2倍にするとか言いだす人がいたらクビにする能力を持て」と説いて回る。
自分の仕事も意識して減らしてきた。5年前から4事業部制を導入し、出店や商品、店舗は各事業本部長に任せている。自分は会議に顔を出して話を聞くだけにした。
とはいえ、創業者だからこそできることがある。千葉県市原市に2290平方メートルの店舗をオープンしたら、近くにヤマダがそれを上回る大型店で乗り込んできた。すると加藤は、店を潰して6800平方メートルに作り替えた。「店の償却?終わってないけど、そんなこと考えたら経営のスピードが落ちる。サラリーマン社長じゃできないよね」。
加藤の視線は今、10年先を向いている。もし日本の電機メーカーが弱くなっていたら、中国メーカーと取引が始まるかもしれない。スケールメリットを確保するなら、組む相手は誰がいいか--。
加藤は決算説明会でポロッと「ヨドバシカメラと組めたらいいな」と漏らしたことがある。その後、発言を否定したが、確かに店舗は競合しないしトップ同士の仲がいい。