夏の旅行シーズンで明らかになる「貧富の差」 インフレの夏、高級ホテルは盛り上がる一方で
「金持ち相手のビジネスに目を向ければ、実際に成長していることが確認できる」。オックスフォード・エコノミクスで観光経済部門の責任者を務めるアダム・サックスは、「その大部分は、所得層によって経済状態が異なることと関係している」と話す。
予約状況や調査への回答、消費動向から、旅行業界はこの夏、そして2024年全体を通して、控えめながらも堅調な成長を見せると予想される。この成長は、パンデミック中に行き損ねた旅行の「リベンジ」として、消費者が猛烈な勢いで休暇旅行を満喫しようとする傾向が数年続いた後でも維持される見通しだ。
物価高で加速する「消費格差」
外国旅行は相変わらずの活況で、国内レジャー旅行も安定。ビジネスの出張でさえも、2020年以降の急激な落ち込みから立ち直りつつある。航空運賃の値下がりのせいで、航空券の消費額は幾分減少するかもしれないが、各空港からは主要日の利用者数が過去最高を更新しているとの報告が上がっている。
「大勢の人々が旅行に出かけ、飛行機を利用しているのがわかる。私たちとしては、持続可能なレベルの成長だと考えている」と、アメリカ旅行協会の調査担当バイスプレジデント、ジョシュア・フリードランダーは言う。
だが、その回復力には所得層によってばらつきがある。リッチモンド地区連邦準備銀行は連邦準備制度理事会(FRB)が発表した経済報告で、旅行支出は「回復し、その大部分は所得に余裕のある消費者が牽引した」と述べる一方で、「反対に低・中所得層の消費者は旅行を控えて」おり、その理由は「家計の逼迫につながる物価高」にあるとした。
高所得層が旅行などの贅沢にはるかに多額の支出をするという、すでに定着している傾向に拍車をかける動きだ。所得分布の上位5分の2の支出は経済全体の約60%を占めるのに対し、下位5分の2は約22%にとどまるが、その差は休暇旅行ではさらに激しくなる。