フランス総選挙で予想外、極右政党「急失速」のなぜ それでも「マクロンは終わった」と指摘される理由
そもそもマクロン氏の支持率低下の背景には、金融界のエリート出身で民主的話し合いを軽視したことがある。防衛や社会保障の重要法案について、議会審議を省略できる憲法49条3項を多発しており、強権独断政権にもはや有権者がついていっていない。
大した政策も打ち出せないマクロン政権が続けば、フランスは弱体化する。「マクロンは終わった」と指摘するメディアも出てきている。思想信条がまったく相容れない政党と無理な共闘をしたツケは大きいとみられる。
イギリスでは14年ぶりの政権交代
欧州では、イギリスの総選挙が7月4日に行われ、中道左派の労働党が大勝。14年ぶりの政権交代となった。スターマー新首相と労働党支持者たちは勝利に酔いしれているようだが、「かつての福祉優先の政策は打ち出せないのでは?」という疑問がある。
というのも、政治が経済優先になった現代、保守も労働党も選択肢は多くはないからだ。「小さな政府」を追求するはずの保守党政権下で、国民の租税負担率(対GDP比)は1940年代以降で最高となっている。
また、労働党だから左傾化とはいえない現実がある。スターマー氏は1997年に18年続いた保守党政権から政権奪取して首相となった労働党のトニー・ブレア氏ほど、圧倒的人気を得た期待の星とは見られていない。
今回の労働党の圧勝は、EU離脱、スコットランド独立運動、テロの脅威やウクライナ紛争を含むロシアとの緊張、コロナ禍などイギリスを取り巻く厳しい状況を経験した14年間の保守党政権の末にもたらされた。
特にブレグジットはデメリットを上回るメリットがいまだ見えない中、イギリスの主要メディアは、「イギリス人はブレグジットの是非を総選挙の争点にしたくなかった」と指摘する。
結果的にブレグジットに反対だった労働党が、ブレグジットの残した負の遺産を皮肉にも受け継ぐ結果になっている。コービン前党首時代の労働党は古臭いイメージの社会主義と党内に浮上した反ユダヤ主義グループが問題視され、スターマー氏はその払拭に努め、労働党は信頼を回復した。
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