建設機械「三国志」--巨大市場・中国の覇者は誰か!?
奥氏の目から見て、三一の建機は新車時点の馬力や操作性などでは日本製と変わらない。品質を反映し、新車価格はコマツやキャタピラーなどトップ企業よりは約2割安いが、斗山インフラコアなど韓国系メーカーやあまたの地場メーカーよりは高いミドルクラスだ。
業界トップクラスに躍り出る決め手となった最大の要因は、今年になって導入したおきて破りの販売促進策だ。建機購入時にユーザーが支払う頭金を撤廃したのだ。
従来であれば、新車本体価格の3割を購入時の頭金として販売代理店に支払い、残額を24カ月かけて返済するのが業界共通の購入プラン。普及型の油圧ショベルの購入なら、240万円から300万円の頭金が必要になる。この頭金を三一はゼロにした。中国の建機購入者は9割方が個人。親類などからカネをかき集めなくとも買える三一に群がった。
頭金ゼロで売掛金は膨張 リスクのツケは下請けに
大胆な手の背景には、昨春に設立した販売ファイナンス会社「三一汽車金融」がある。販売ファイナンスそのものは同業各社が手掛けているが、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の認可を受けているのは三一のみ。商業銀行に力を借りる他社よりも、低コストかつ機動的な融資判断ができるとみられる。これを可能にしたのは、経営幹部の政治人脈だと伝えられている。
だが販売を加速させた頭金ゼロ戦略は、同時に売掛金の焦げ付きや不良債権の抱え込みのリスクを増大させる。三一の11年1~6月期の連結財務報告書によると、売上高は前年同期比1.7倍だったが、売掛金も1.6倍に膨張。営業キャッシュフローは10分の1に急落した。金繰り悪化のシワ寄せは下請け企業に行く。
三一は6月、下請け企業との取引改善策を発表したが、そこで明らかになったのは「買掛金の2割で期限が守られていない」、「入札時に集めた保証金を約束の時期に下請け企業に返済していない」といった実情だ。