日本でしか働けないと、面白い仕事はできなくなる 田中良和・グリー社長
そうした人たちが、日本の給料の5分の1、10分の1で一生懸命に働いている。彼らのスキルはすでにかなり高い。そう考えると、日本で働いて何かを作る場合、それが相当な付加価値のあるものでないと、賃金の格差は説明できない。たまたま日本で仕事をしているというだけで、5倍、10倍の給料がもらえる、という状況はいつか是正される。
重要なのは、全世界において自分の価値をベンチマークする発想。日本でどういう職種に就いたらいいかではなくて、世界の中で求められていることをやっているか問うべき。フィリピンのA君と、アメリカのB君と、ヨーロッパのC君と比べて自分はどうなんだと。
たとえば、僕は日本では経営者として若いといわれますが、僕からすると若くない。フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ(28)とか、世界中のネット企業に僕より若い人はいっぱいいますから。だけど、日本しか知らない人は僕を若いと思っている。
──グローバル化が進む中で、求められる能力、発想とはどういうものでしょうか?
日本の優れた点は、本当に勤勉でまじめな人が多いこと。逆に足りないのは、スケールアウトする発想。最初から世界で売ろう、作ろうという考えが薄い。世界のどこでも誰でも同じ品質を出せるように世界共通のマニュアルを作ることをせず、以心伝心に頼っている。それでは、世界規模のビジネスはできない。
そして、「求められるものを作る」という発想が足りない。日本にあるものはよいものだから、あとは紹介の仕方次第だと考えてしまう。
仮に自分が沖縄の人だとすると、「沖縄のよさを伝えるためにソーキソバを売ろう、渋谷の駅前に店を開いたら絶対に売れる」と考えるかもしれない。しかしそれは、渋谷の駅前でソーキソバが求められているかどうかとは関係ない話。むしろ渋谷でラーメンがはやっているなら、ソーキソバよりも、沖縄流のおいしいラーメンを作ったほうがいい。