社食変更に猛抗議!Googleはここまで自由だ 人事担当責任者が語る「評価と社風」
実力を存分に発揮した社員は、成果による差もついてくる。人事部門はえてして、優秀な社員からできの悪い社員まで正規分布している前提で評価する。これは間違いで、正規分布では考えられないほど突出した能力を持つ社員が何人か出てくるのが当たり前で、べき分布に従うという。
能力主義を徹底した欧米企業では、成績の悪い社員はクビになる。しかしグーグルでは、ダメ社員の能力向上に骨を折る。ダメ社員を片っ端からクビにしても、新しい人材を雇うには時間もコストもかかるからだ。新しい人材の潜在能力を認めても、新天地での仕事を覚えてもらわなければならないし、それがうまくいく保証もない。なぜなら、前の会社での好成績が、社内のリソースや同僚との関係による恩恵であることもありうるからだ。
批判もすべて発言できる社風
「グーグルでは、毎年1件のペースで大がかりな情報漏洩が起きる。調査の結果、故意でも偶然でも、意図的でもそうでなくても、当事者は必ず解雇される。個人の名前は公表しないが、どのような情報が漏洩して、どのような結果になったかについては全社に知らせる。多くの人が多くの情報に触れている以上、間違いを犯す人が出ることは避けられない。しかし、私たちが享受する開放性に比べれば情報漏洩のコストは小さいのだから、経験する意味もあるだろう」
グーグルは赤面するような不祥事でも全社で共有する。公明正大であることこそが、社員の不満を最小限に抑えると確信しているからだ。
無料のカフェテリアも、慣れれば感謝は薄れてくる。食べ物を詰めた容器を車のトランクにしまい込む者もいる。健康増進と環境保護の観点から、月曜日に肉を食べない「ミートレス・マンデー」を実験導入した際のこと。抗議のバーベキューを開く者、フォークを投げる者、そして「俺の人生に指図するな。くだらないことを続けるならマイクロソフトかツイッターかフェイスブックに転職してやる」との匿名意見。
2008年には、カフェテリアのデザートのパイの名に「フリー・チベット」の文言が含まれていたことから、世界中のオフィスでさまざまな意見が飛び交う大騒動に発展した。ただ、ここで大事なことは、何でも言い合える社内の風通しのよさである。
「社会の壮大な枠組みのなかで、デザートの名前は大した問題ではない。しかし、こんなにささいなことで処罰されるかもしれないと思った社員が、CEOに厳しい質問をぶつけられるだろうか。会社のミッションに忠実かどうか、ユーザーをつねにいちばんに考えているかと、経営陣に聞けるだろうか。このような議論が出てくることは、苦い経験であると同時に、何かがよい方向に向かっている兆候なのだ」
ガリバー企業ゆえに、グーグルの一挙手一投足は必要以上に監視される宿命にある。ラズロ・ボック氏も『WORK RULES!』を書いた理由を「よくも悪くも、グーグルが大きな注目を集めているからだ」と吐露している。
(「週刊東洋経済」2015年6月13日号に一部加筆し転載)
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