数字に強くても「人望ゼロ」残念上司に欠けた視点 血の通わない数字をただ伝えても人は動かない
たとえば、次のような指示はどう感じるでしょうか。
キミに来年お願いしたいことはたった1つ。仕事の生産性を上げてほしい。キミはこの1年間、業務量の多さに苦しんでいた。それは私もよくわかっている。私自身、サポートができていなかったと反省している。来年はここをテーマに、もう一歩だけ成長しよう。だから来年は持っている業務を手放す努力をしてくれないか。具体的には業務時間を10%削減し、かつ売上高は1億円を目指してくれ。他の細かいことは気にしなくていい。そこは私が責任を持つから。キミは1年間、徹底して生産性の向上に努めてくれ。
この上司は少なくとも部下という人間の存在をしっかり認め、成長を願い、指示をしています。「数字を使った指示」という点では同じでも、どちらが人を動かせる指示かは明白です。
「そんなことはわかっている」と感じる管理職や経営者たちはたくさんいるでしょう。しかし、数字に強い管理職はどうしてもビジネスの渦中にいると、つい数字とロジックを過信してしまい、それをきっちり正確に伝えることが正しい指示だと思い込んでしまいます。
これは、「人を動かす」という観点では致命的なことです。マネジメントは学生時代の算数や数学とは違います。数字とロジックを駆使して導いた答えに意味はありませんし、どうせその数値計画どおりにはなりません。ビジネスとは、非論理的な生き物が営むものだからです。
人を動かすのは、完璧な分析結果から導かれる機械的な数字ではありません。人間をしっかり見ている人物が発する、「血の通った数字」なのです。
リスクをとっていない人の話なんて聞けない
最後に、ある企業の研修でお会いした若手ビジネスパーソンが私に語ってくれた、職場の上司に対する本音をご紹介します。
「リスクをとっていない人の話なんて、聞く価値ありませんよ」
なかなか厳しいご意見だと思いつつ、一方で「そのとおりだよな」と深く頷くものでした。机上で数字をこねくり回せば、誰だって「正しい指示」はできます。しかし、それで人が動くなら、管理職なんてAIや学生がやれば良いのではないでしょうか。先ほどの例に、次のような表現がありました。
「他の細かいことは気にしなくていい。そこは私が責任を持つから」
ビジネスパーソンにとって、このような発言はリスクを伴います。「Aをやれ。Bもやれ。Cもやれ」といった指示は簡単です。しかし「Aをやれ。それ以外はやらなくていい」という指示は簡単ではありません。ある種の勇気や覚悟がないと、この発言はできないのです。
リスクをとっていない人の話なんて、聞く価値がない。私自身もこのことを肝に銘じ、これから先も「数字に強い管理職たち」に大切なことを伝え続けていこうと思っています。
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