「ペイディの黒字決算」ではみえないBNPLの苦難 ジャックスは事業撤退、軌道修正を図る動きも
BNPLのビジネスモデルをめぐっては、以前から海外を中心に収益性の低さが指摘されてきた。国際決済銀行(BIS)は昨年12月に公表したリポートで次のように指摘している。
「主要BNPL事業者は収益性の課題に直面している。2018年以降、とりわけマーケティングや管理・技術費用などの高い営業経費が事業者の黒字化を妨げている。さらに貸倒損失の増加と(中略)競争激化により、2021年から2022年にかけてのBNPL事業者の資産収益率(ROA)は著しく低下している」
BNPL事業者にとって主な収益源となっているのは加盟店からの「手数料」だ。
クレジットカードと異なり、利用者から手数料や利息を徴収しない一方、加盟店からクレジットカードより若干高めの手数料を受け取る。だが、BISの指摘のとおり、先行投資や貸倒費用がかさんでいるのが現状だ。
海外事業者と国内事業者の相違点
収益性の課題を認識されたことにより、BNPL事業者に向けられる評価も変わった。
ソフトバンクグループが出資するスウェーデンのBNPL事業者クラーナは2021年の資金調達時で企業価値が456億ドルだったが、翌2022年には67億ドルにまで下落。それまでの高い期待とは一転した。
収益性に改善の兆しは見られる。クラーナの2023年の営業損失は約480億円(32億スウェーデンクローナ)となり、前年から約7割縮小。直近2024年1~3月の営業損失も約39億円(2.6億スウェーデンクローナ)と前年同期比約8割の縮小となっている。
アメリカのBNPL事業者アファームも1~3月の営業損失が1.6億ドル(約255億円)と前年同期比で5割近く縮小した。
だが、両社とも依然として大規模な赤字体質であることに変わりはない。
むしろ強く懸念されるのは国内勢の行方だ。そもそも日本と海外ではBNPL市場の様相が大きく異なっている。事業者の収益性の低さは国内外で共通だが、BNPLの利用ニーズに関しては大きな差があると考えられる。
というのも、クレジットカード利用でリボ払いが普及している海外では、「利息負担のあるクレジットカード」と「利息負担のないBNPL」の比較で、BNPLを利用するニーズが消費者に生まれる。